日本に数多あるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。名店店主といえど、影響を受けた店はあるはず――。日比谷線三ノ輪駅からほど近くにある名店「ラーメン屋 トイ・ボックス」の店主が愛する一杯は、同期であり永遠のライバルが作る極上の醤油ラーメンだった。
【写真】今すぐ食べたい! 5年連続ミシュラン受賞「トイ・ボックス」のラーメンなど(全9枚)
■「鶏と水」だけのラーメンは作るのが簡単?
「トイ・ボックス」は2013年12月に荒川区でオープンした。店主の山上貴典さん(44)はもともと趣味でラーメンを食べ歩くラーメンフリーク。定職につかずフラフラしていた自分への不安から、大好きなラーメンの世界へ飛び込んだ。町田の名店「ラァメン家 69’N’ROLL ONE」の鶏と水だけで作った醤油ラーメン「2号ラーメン」に魅せられ、名店を渡り歩いたのち、13年に独立した。
ラーメン好きだったこともあり、山上さんの頭にはトレンドもしっかり入っていた。開店翌年からミシュランガイド東京のビブグルマンを獲得し、途切れることなく5年連続で選ばれ続けている。しかも驚くのは、開店当初から同じ系統のラーメンを提供しているのではなく、その作りをガラリと変えているということだ。
大好きだった「69’N’ROLL ONE」の鶏と水だけで作った醤油ラーメンを自分も再現したい。その思いで、17年にラーメンを一気にリニューアルした。そして、その後も、見事ビブグルマンを受賞しているのだ。
「トイ・ボックス」や「飯田商店」(湯河原)など「69’N’ROLL ONE」に影響を受けたお店が鶏と水だけで作った醤油ラーメンで人気を博したことで、巷には鶏と水だけで作ったラーメンが激増していった。美味しいお店もたくさんあるが、中には一概にそうとも言えないお店があるのも確かだ。「鶏と水」という食材がシンプルに見えるため、真似されやすいという現実がある。シンプルなだけに本当に美味しいものに仕上げるには技術が伴わなければならないわけだが、残念ながら全てが全てそうなっているとは言い難い。
都内で鶏と水のラーメンを牽引している、ミシュランもお墨付きの「トイ・ボックス」だが、このブームについてはどう思っているのか。