ちなみに、このタッチ決済の分野では日本の技術力も世界を牽引した。

 たとえば、SuicaやiD、QUICPayなどの決済方式は「Type-F」と呼ばれるもの。開発したのは、ソニーだ。「世界一」ともいわれる日本の通勤ラッシュをさばけるほど通信速度の速さに定評があるものの、導入コストの高さがネックとなり、国際的な普及につながらなかった経緯がある。

 マイナンバーカードは国際規格である「Type-B」に則っている。Androidの機種では国内メーカーに限らず、GalaxyやGoogle Pixel、中国メーカーのスマホなど幅広く対応できているが、注目されるのはiPhoneへの対応だろう。

 なぜiPhoneはまだ、だったのか。

 実は、先の「GP-SE」はAndroid OS向けのチップとなっており、iPhoneには搭載されていない。その代わり、似たようなものとして「Secure Enclave」というチップがiPhoneやiPadなどに搭載されている。この「Secure Enclave」は、指紋認証の「Touch ID」や顔認証の「Face ID」といった機能を司っている。

岸田首相も搭載に“前のめり”

 日本ではiPhoneのシェアが7割近くを占めており、iPhoneへの対応も急がれている。政府もいち早いiPhoneでのスマホ用電子証明書搭載に向けて進めており、2022年12月15日には、岸田文雄首相が米アップルのティム・クックCEOと首相官邸で面会し、iPhoneへのマイナンバーカード対応の協力を要請している。ティム・クックCEOも「取り組みたい」と前向きの回答をしており、現在開発が進められているとみていいだろう。ハード面で技術的にはiPhone上でもクリアしているとみられるため、あとはそれを正しく動作させるソフトウェア面の開発が問題となる。

 デジタル庁によれば、スマホ用電子証明書搭載についてiPhoneへの対応時期は「未定」としている。ただし、前述の通りトップ同士の話し合いや、ハード面での問題は解決していると考えられるため、そう遠くないうちの実現が期待できそうだ。

(ライター・河嶌太郎)