この点、矯正治療は絶対、紹介してもらう必要があると思います。とくに治療途中で引っ越しをする場合は、治療費のことも含め、新たな歯科医にしっかり引き継いでもらいましょう。

 きちんとした形で歯科医に紹介をお願いすれば、引っ越し先から戻ってきたときにも、また、かかりやすいのではないでしょうか。

 こちらも、

「お久しぶりです。この春からまた、東京に戻ってきました」

 などと再来してくれる患者さんを見ると、温かい気持ちになります。

「また、うちを選んでくれたなんてありがたいな」

 という気持ちで、診療に取り組めます。

 引っ越し先が海外の場合は、できる範囲でまずはその国で診療をしている日本人の歯科医を探します。

 アメリカで歯周病の専門医を探す場合は、アメリカ歯周病学会に所属する日本人歯科医の中から、紹介するようにしています(主要都市に数人、いらっしゃいます)。ただし、国によっては情報がないので、その場合、

「現地の口コミ情報などを通じて、いい歯医者を見つけてください」

 ということになります。

 一方、アメリカのように医療費が高額な国では、「歯が悪くても、かかりたくない」「痛くても我慢する」が本音だと思います。

 そこで、転勤や留学が決まった患者さんには、出発前に悪いところを徹底的に治してもらうようにしています。さらに、一時帰国の際には、必ず受診をするよう、声をかけています。

 なるほど、と思ったのは歯の痛みが起こったとき、応急処置だけ現地で受けて、その後の治療は帰国後、日本で受けるパターンです。それだけ、日本の医療体制が恵まれており、安心して治療を受けられるということなのでしょう。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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