プライベートで言えば、両親が高齢になったこともあって、昨年、宮崎から両親が住む仙台に引っ越しました。子育ては“人生の復習”という感じがあったけれど、両親を見ていると“人生の予習”をさせてもらっているような気がします。

 息子とは離れて暮らしていますが、短歌を作る上で、良い“壁打ち相手”になってくれるというか、的確な意見を言ってくれることが多いです。母親が良い歳こいて、恋の歌を作っていたりするのは、子どもとして微妙な気持ちもあると思うのですが(笑)、言葉に関しては対等に話し相手になってくれるのでありがたいです。

——ドラマをきっかけに短歌に興味を持った人に伝えたいことは? 

 短歌を作ることは、人生を豊かにしてくれると思います。特別な何かが必要なわけではなく、誰でも思い立った時に、いつでも作ることができる。

 これまでの経験から言えるのは、短歌は万人受けするものを狙うより、たった一人のために作る歌の方が強い。万人に受ける感じを目指すと、結果的に誰にも届かないような気がします。忙しい毎日の中で、歌のために立ちどまる時間が生まれることは、丁寧に生きることにつながります。

 短歌は俳句に比べて季語を入れるなどの縛りもないし、自分の思いを乗せやすい文芸。千年以上前からある日本の財産だと思います。歌を作ることは、生きることを確実に豊かにしてくれる。だから一人でも多くの人に、その魅力を味わってほしいです。

(聞き手 松岡かすみ)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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