広瀬爽彩さんの遺体が見つかった公園の管理事務所入り口には、多くの市民が冥福を祈って花などを飾った(2022年3月28日撮影)
広瀬爽彩さんの遺体が見つかった公園の管理事務所入り口には、多くの市民が冥福を祈って花などを飾った(2022年3月28日撮影)
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 北海道旭川市でいじめを受けていた当時中学2年の廣瀬爽彩さん(14)が遺体で見つかった事件で、廣瀬さんの母親がインターネット上の投稿で名誉を毀損され、精神的苦痛を受けたとして、投稿した女性に対し、約250万円の損害賠償を求めて旭川地裁に提訴したことが報じられた。被告側は争う姿勢を示しているという。

【写真】「加害者」と名指しされた男性を誹謗中傷する書き込み

 弁護士法人LEONの田中圭祐弁護士は「名誉棄損での民事訴訟において裁判所が認める金額は低額になりやすく、100万円程度の請求であっても、満額請求が認められるケースは少ないです。約250万円の損害賠償請求は、事の重大性を分かってほしいという被害者の思いを強く感じます。名誉棄損は具体的事実の摘示があること,その事実の摘示が人の社会的評価を低下させるものであれば成立します」と話す。

 誹謗中傷は、大きく分けて侮辱と名誉棄損に分かれる。侮辱は「度を超えた言葉」の線引きが難しい。例えば、芸能界で問題になった「ブスいじり」は受け取る側の認識や、発言者との関係性で侮辱と判断するのか変わってくる。一方、名誉棄損は「具体的事実の摘示で社会的評価が低下した」と判断のハードルが比較的、低いとされている。ネット上の書き込みで、「あの人はうざい」だけでは社会的評価が低下する内容とみなされないが、「あの人は覚せい剤をやっているから、ああいう事件を起こしたんだな」、「あの人は社内の人間と不倫している」など書き込めば、名誉棄損に該当するとみなされる可能性が高い。

 田中弁護士によると、被害者を傷つける誹謗中傷の書き込みをする人間はネット上に流れている真偽不明の情報を信じ、「他の人も書き込んでいるからいいや」と軽はずみな気持ちで書き込んでしまうケースが多いという。被告の立場になり、「本当に訴えられると思わなかった」と後悔する。田中弁護士は「『ネット上で誹謗中傷の内容を書き込んでしまった』と弊社に来る相談者は増えています」と明かす。

 間違った正義感で人生が暗転することもある。

「『あの人に詐欺でだまされました』というYouTube動画やネット上の情報を見て、『許せない』と怒りに任せて誹謗中傷の書き込みをして、名誉棄損で訴えられるケースもあります。『SNSで書いてあったから自分も書いた』という言い分は通らない」

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