出産を機に、いい意味で人に任せられるようになったと語る坂本さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
出産を機に、いい意味で人に任せられるようになったと語る坂本さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

『REVENGER』、『火狩りの王』と話題の新作アニメへの参加が続き、精力的に2023年のスタートを切った坂本真綾。妊娠・出産を経て本格的に活動を再開した彼女の今の気持ちを語ってもらった。

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 声優、歌手、俳優、作詞家など幅広く活動している坂本真綾。2021年12月に妊娠を、2022年4月に第1子を出産したことを発表した。その後、少しずつ活動を再開し、2022年11月に約1年8カ月ぶりとなるコンサートを開催。そのステージで彼女は、「いろんなことにチャレンジしながら、とりあえずまだ歌っていきます、と伝えるために来ました」と語った。

「未来永劫歌いますという意味ではなく、まだ歌う気はありますということだったんですけどね(笑)。25年以上活動を続けてきて、年齢的にも落ち着いていい時期なんですが、“まだやり残していることもあるな”という思いもあって。しばらく仕事から離れる期間があって、改めて人前に立ったときに、“まだやり残したことがある。より良い自分を目指したい”と感じたので」

■出産を機に考え方が完全に切り替わった

 幼少期から子役として舞台に立ち、10代半ばで声優として評価を獲得。「仕事最優先の生活を何十年も続けてきて、この概念が覆ることはないと思っていました」という仕事人間だったが、出産を機に生活スタイルは一変。彼女にとっては、これまでのキャリアを俯瞰する機会にもなったという。

「常に“この仕事は私にしかできない。誰にも代わってもらえない”というプレッシャーを感じていたけれど、そんなことないんだなって。世の中は持ちつ持たれつ、困ったときは助け合って成り立っているわけで、“私の代わりはいくらでもいる”と気楽に考えられるようになったのは、すごく大きい変化でした。もちろん責任ある仕事だけど、自分が楽しむこと、日々健やかに過ごすことも大切。新しい生活のなかで、これまで食指が動かなかった分野の芸術に興味が湧いたり、今までとは違った視点で世界を見つめられたりするのも楽しいですね。以前は“もし子供ができたら、休んでいる印象を与えないように、どうやってキャリアをつなぐか”ということばかり考えていましたが、いざ出産したら考え方が完全に切り替わりました」

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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