日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ患者への対応の疑問」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
* * *
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の今年の夏の流行(第7波)は、ようやくピークアウトを迎えたようです。Our world in dataによると、8月10日ごろを境に、コロナの新規感染者数は減少傾向に転じています。
勤務先のクリニックでは、発熱や風邪症状を訴えて受診する人が後を絶ちません。しかしながら、予約なしで受診された方が待合室に入りきれずに溢れてしまった7月中旬と比べれば、8月に入って受診者数も実施するPCR検査数も減ってきていました。ですから、8月中旬に認めたコロナの新規感染者数の減少は、診療する上での肌感覚を一致しているように思います。
とはいえ、検査をすれば7割ほどで陽性を認める状況は続いています。新型コロナウイルス感染症は現在「新型インフルエンザ等感染症」に指定されており、感染症の中でも上から2番目に危険度が高い結核や重症呼吸器症候群、鳥インフルエンザなどの2類感染症と同等の「2類相当」として扱われています。そのため、感染症法に基づいて入院勧告や就業規制、医療費の公費負担、外出の自粛要請など様々な措置を講じることができます。
また、コロナを診断した医師は「発生届」を直ちに保健所に提出しなければならないことが定められています。患者さんの個人情報に加えて、職業、コロナワクチン接種の有無や種類・接種日、症状、検査日や診断日、重症化リスクの有無など記入すべき事項がたくさんありました。先月ごろから発生届への記入項目は半分ほどに減ったものの、毎日30枚から多い日には50枚近くも記入する必要があります。診療に支障をきたさぬようにこの事務的な作業をこなすためには、昼休みを短縮するか勤務の開始より早く出勤しなければならず、負担になってしまっていると感じざるを得ません。