なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、自分らしさを見つけるためのヒントをご紹介します。
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■糸井重里さんは「FMしゃべり」がお嫌い!?
「ぼくは『FMラジオ』というものに対して、実は結構批判的なんですよ」
これは2018年に、糸井重里さんが発行している『ほぼ日手帳』のトークイベントでゲストに呼んでいただいたとき、糸井さんがおっしゃっていたことです。
この話題の中で出てきた、糸井さんが言うところの「FMしゃべり」とは、例えば「秋は気分がメランコリックになって、夏の恋の清算に思い悩んでいる」と決めつけてしまうような、聞き手を都合よく誘導していくような話し方なのだとか。
「それはそれで、違いますよー、糸井さん!」と全力で反論し、トークイベントは大いに盛り上がりました。糸井さんのイメージとしては、FMしゃべり=借りてきた定型文のような、話し手の実感がこもっていない台本のような言葉、とのこと。ううむ、立場的にしっかり誤解を解いておきたいお話です。
FMのDJが定型文のような言葉を話しているとは思いませんが、「FMラジオのDJっぽさ」というある種の「型」はあると思います。例えば「大人の女性(男性)の落ち着いた艶っぽい声」「英語まじりで、独特の流れるようなリズムがあるおしゃれな話し方」というイメージでしょうか。
子どもの頃から、トークは少なめ、大人の雰囲気たっぷりのジャズが流れる「これぞFMラジオ!」という番組ばかりを聞いてきた私は、おしゃれでキラキラした世界、いわゆる「FMしゃべり」に大いに憧れを抱いていました。頭に浮かべていたのは、大都会を見下ろす高層ビルのスタジオで、ワイングラスを回しながらしっとり話す美しい女性。