プーチン大統領とルカシェンコ大統領への侵攻反対デモは各地で起きている(gettyimages)
プーチン大統領とルカシェンコ大統領への侵攻反対デモは各地で起きている(gettyimages)

 東にロシア、南にウクライナ、西にポーランドと国境を接するベラルーシ。同国のルカシェンコ大統領は「欧州最後の独裁者」と呼ばれるほど、長年にわたって強権をふるってきた。今回のウクライナ侵攻では親密な関係だったロシア側に立ち、国際的にも今後の動向が注目されている。そのルカシェンコ大統領に明らかな変化が生じたのは「2年前の2020年から」と指摘するのは、ベラルーシの日本大使館に勤めた経験を持つ一般社団法人ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所所長の服部倫卓さんだ。謎に包まれたベラルーシで、いったい何が起こっているのか。服部さんに話を聞いた。

【写真】プーチン氏の顔写真とともに「間抜けなプーチン」の文字が書かれた火炎

※記事前編<「プーチンの義兄弟」として生きるしかないベラルーシの独裁者ルカシェンコ 強権なのに奇妙な「支持」>から続く

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 ウクライナ侵攻がはじまってもロシアとの関係を密にするベラルーシのルカシェンコ大統領だが、独裁は続けてきたものの2010年代半ばには欧米との関係も良好になってきていた。

 そんなベラルーシを、ロシアはどのように見ていたのか。

「プーチンにしてみれば、ベラルーシは欧米といちゃついているように見え、ルカシェンコの顔を見るのも嫌だったはずです」

 欧米諸国とそれなりに良好な関係を維持することでベラルーシに民主的な政権が誕生し、行く末はEU加盟を目指すなどと言い出したら、困るのはロシアだ。

「だからこそ、プーチンはずっと水面下でルカシェンコ体制を支えてきた。そんな事情にもかかわらず当のルカシェンコは20年あまり、ロシアの癇(かん)に障ることをさんざんやってきた。プーチンにとってルカシェンコは、煮ても焼いても食えないおやじという感じだったでしょう」

■ベラルーシ国民の世代交代

 ところが、今から2年前のこと。

 ルカシェンコ政権と欧米、ロシアの関係が一変する。

 その背景について、「見逃せないのがベラルーシ国民の世代交代です」と、服部さんは説明する。

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ソ連ノスタルジアが希薄になった