ウクライナからポーランド国境に避難してきた親子
ウクライナからポーランド国境に避難してきた親子

 都内に住む20代のウクライナ人女性は栗色の長い髪、緑色の瞳で見つめながら、静かな口調で話した。女性は5年間日本に滞在している。

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「ウクライナにいる私の家族に『日本に来れるよ、来る?』と聞いたら、みんな『日本へ行くことに興味はない』『難民になりたくない』と言っています」

 女性の両親はウクライナの南に広がる黒海沿いの地方都市に住み、祖母や親戚は首都キーフに住む。両親は共働きだったが戦争になって仕事がなくなったという。

「お父さんは会社でマネジメントの仕事をしていましたが、営業している場所は危ないからもう閉めた。お母さんは病院で働いていたけど、今は子供たちの施設で働いていて、給料はもらっていない。地下鉄も動いてない」

 それでも今もウクライナにいる。

「日本に来たら、1年間のビザが出るのは知っています。でも、家族は言葉もわからないし、生活に必要なことも何もわからない。日本は遠い……」

 外務省によると、クリミアを除いたウクライナの人口は約4159万人。ロシアの侵攻でウクライナ国内外に避難、移動した人は1千万人にのぼる。国内に留まる人たちがいる一方、戦火の危険の中、国境を越えて逃れる人も多い。

 日本政府もいち早く支援を表明。避難民は現在、1年間の「特定活動」の在留資格が得られるようになり、就労も可能だ。企業や自治体の支援の動きも目立つ。 

 岸田首相は3月24日の記者会見で、こう語った。

「日本への避難民受け入れ支援を進めるための取り組みも進めてまいります。ポーランドにウクライナ避難民支援チームを設けます。こうした取り組みをポーランドのモラヴィエツキ首相に説明し、先方から日本の貢献を高く評価するとの発言がありました」

 岸田首相は、ウクライナ及び周辺国に対しては1億ドル(約122億円)の人道支援に加え、追加で1億ドルの緊急人道支援を行なうことを表明。周辺国に滞在するウクライナの避難民支援のため、物資協力や医療・保険などの分野で人的貢献も検討しているとした。4月1日から林芳正外相が岸田首相の特使としてポーランドを訪問する予定だ。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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