首相レク資料の一部
首相レク資料の一部

 この問題の一端が現れたのが、今年1月に濃厚接触者の自宅療養期間をコロコロと変えた問題だ。14日に自宅待機期間が14日間から10日間に変更され、そのわずか2週間後の27日に今度は7日間に変更されている。

 どのような意思決定がなされたのか。AERAdot.は二つの内部資料を入手した。1月14日に待機期間が10日間に短縮されるときに行われた岸田首相への「レク資料」には、アメリカや欧州では5日間の自宅待機が実施されていることを紹介しながらも、次のような記述があった。

<わが国においては、濃厚接触者の待機期間について、科学的根拠に基づき適正な期間とすることが求められている>

<オミクロン株の潜伏期間は10日を超えることは極めて稀である>

<このため濃厚接触者の待機期間を14日から10日とする>

 日本の科学的見地としては、10日が妥当であると判断したということだ。

 しかし、そのわずか2週間後の27日に自宅待機期間を7日に短縮した。その際の首相へのレク資料では、欧州の濃厚接触者のガイドラインを紹介した上で、濃厚接触者が7日間待機後に感染者が発症するリスクは0・5~2%で許容できるとしている。

 いったい何が起きたのか。これについて厚労省関係者はこう説明する。

「岸田首相は欧米並みの緩和を求めていましたが、迫井コロナ室長や吉田次官が『隔離期間の短縮は10日間が限界というのが科学的知見だ』などと強く主張し、首相を説得したところでした。しかし、その後、自宅待機者の大幅増加により社会の混乱を招く事態となり、慌てて7日に短縮した。この2週間で科学的な前提条件が大きく変わったわけではありません。科学的に判断するのであれば、すぐに7日に短縮することもできました」

 このような実態が本当にあるのか。迫井コロナ室長に取材を申し込んだが、「立て込んでおり、回答を用意することができない」(担当者)。尾身会長にも取材を申し込んだ。尾身氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)の担当者は「分科会会長という立場であれば、内閣官房に問い合わせてほしい」、内閣官房窓口は「窓口はJCHOのはず」とたらいまわしだった。

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非科学的、身内の論理は今に始まったことではない、と専門家