1月25日、「基本的対処方針分科会」に臨む尾身茂会長(右)
1月25日、「基本的対処方針分科会」に臨む尾身茂会長(右)

 新型コロナの感染拡大が止まらず、国会でも緊急事態宣言を出すのか、議論が行われている。オミクロン株の流行により、病症も変化。改めて科学的見地に立った対応が求められている。そんな中、AERAdot.では厚労省幹部と尾身氏ら専門家による非公式会議の議事録を入手した。そこには分科会でもない非公式の場で政策の中身や世論へのメッセージなどが決まっていく様子が書かれていた。政府関係者からはこうした会議が根拠があいまいな政策につながっているという指摘が出ている。

【画像】コロナ非公式協議の中心にいる意外な人物はこの人

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 ここにA4で2ページの議事録がある。オミクロンの感染拡大が続く1月31日、今後の対応などについて、厚労省幹部と専門家らの間で議論が交わされた。出席者は、厚労省医系技官で内閣官房の迫井正深新型コロナウイルス等感染症対策推進室長(コロナ室長)と尾身茂分科会会長、オンラインで押谷仁分科会メンバーも参加した。議事録にはこんなやり取りが記されている。

押谷「オミクロン株が減った後、どうなるか見通せない部分がある。デルタ株やほかの変異株が流行してくる可能性もある。基本的対処方針をオミクロンの特性に合わせて変えてしまった場合、次をどうするのか」

尾身「若者から小児や高齢者に感染が拡大している。そのため、高齢者の重症者をどう見つけて治療するか、小児をどうサポートするか、学級閉鎖をするのか、保育所をどうするかが重要になってくる。知事会からの事例を踏まえてどう対策をとるかが肝」

コロナ室長「それを整理し、何が大事かを言ってもらいたい」

 これは非公式な会議だ。一見、単に政府側と感染症の専門家らが議論を交わしている光景にも見えるが、実は大きな問題があるという。厚労省関係者はこう語る。

「本来、専門家は独立した立場で政府に対し専門的知見を提言する関係にある。迫井コロナ室長は尾身会長ら専門家と定期的に非公式の面会を実施し、密室の場で政策の中身や世論へのメッセージを決めている。専門家の提言などを自分たちの都合に合うように誘導している」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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尾身会長がコロナ室長の要望に応じる様子も