1月19日、新型コロナ感染症対策本部で発言する岸田文雄首相
1月19日、新型コロナ感染症対策本部で発言する岸田文雄首相

 こうした厚労省の問題は今に始まった話ではないようだ。元厚労省医系技官で、『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』の著書がある木村盛世氏は「厚労省は以前から科学的根拠にもとづいた政策決定ができず、身内の論理で決めてきた」と指摘する。

 木村氏がコロナ対策の最良の例として挙げるのが、イギリスだ。専門家がデータを収集して、分析し、それを政府に提供する。政府は科学的根拠に基づいた決定を下す。こうしたデータは公開されている。状況に応じて強力なロックダウンをすることもあれば、緩和政策に方向転換することもある。政策の検証がしっかりと行われ、政策の失敗は次の対策に生かされる。

 他方で日本ではコロナが始まってからの2年間、厚労省や分科会は、日本国内での感染状況について科学的な調査を積極的にやってこなかった。何がデータから判明し、反対に判明していないかしっかりと説明することもやってこなかった。また、コロナ対策で失敗しても、決して「失敗した」という説明をすることはなかったという。

「厚労省や医系技官が本来やることは、科学的根拠に基づいて政策を進め、国民に説明していくこと、分科会のメンバーはそのための研究を行い、データを公表していくことが役目です。しかし、厚労省では少ないながらも集めたデータを外に出すことはせず、自分たちの都合の良いように解釈するばかりです。分科会もデータに基づいた検証は行われず、世間の空気を読んだかのような発言を繰り返している。非公式の密室の場で科学的根拠があいまいなまま対策を決めていくなんて話になりません。日本のコロナ対策は医学とか科学ではなく、もう厚労省の利権と尾身会長ら専門家のパフォーマンスになってしまっている」

 オミクロンの感染拡大と混乱が続く中で、「この2年間、政府は何をやってきたのか」という失望の声は多い。改めて政策決定のあり方が問われている。

(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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