一方、学校現場へのICT導入を強く訴えるのは、同じく調査に当たったサイボウズ社長室の中村龍太さんだ。

「例えば、長野県佐久穂町に2019年に開校した茂来学園大日向小学校はドイツのイエナプランの教育を取り入れた学校として話題になりました。実はこの学校、先生の仕事を効率化するために先生自身が業務効率化アプリを開発したんです。その開発過程で弊社に相談が来て、弊社の『kintone』を活用してもらうことになりました。操作が簡単なので先生たちがほしいアプリが作りやすいんですね。このアプリには子どもの「観察記録」「面談記録」「保健室来室記録」などの情報が入っていて、複数の先生が感じ取った一人ひとりの子どもの関心や学びを保護者に伝えることがグンと楽になったようです。今では、保護者もアプリを開発し学童クラブでの子どもの情報も学校に定期的に共有しています」(中村龍太さん)

 公立校でのICT導入にははいろいろハードルがありそうだが、中村さんは仕事の効率化は必須、と強調する。

「保護者は民間企業に勤めている人が多いわけですし、知識もありますよね。実際、PTAでICTを導入しているところも増えてきました。GIGAスクール構想では子どもたちのタブレット学習が強調されていますが、先生の仕事の効率化を図る上でも重要でしょう」

 前出のなかむらアサミさんは、「先生たちのメンタルにもっと注目してほしい」と言う。

「昨今、学校はいろいろな批判の目にさらされやすく、また現在のコロナ対策も相まって先生たちは“教育のプロ”として動きにくくなっています。学校の仕組みの改革も必要ですが、それと同時に必要なのが、周りからの人間らしい、思いやりの『一言』です。保護者や、保護者でなくても学校の先生と関わる方であれば誰でも『先生おつかれさまです』『先生、ありがとうございました』『先生もどうぞお体第一で』といった一言をかけるようにしましょう。この一言で、だいぶ救われる先生は増えると思います」

(教育エディター・江口祐子)