Q 「襲う」と「名」で、なぜ名を継ぐことになるの?
A 「襲」に「重ねる」「継ぐ」の意味がある

 歌舞伎や落語の世界などで、先代の名を継ぐことを「襲名」といいますが、「おそう」という意味の「襲」が用いられるのはなぜでしょうか。「襲」という字は「龍」と「衣」の組み合わせで、死者の衣の上に龍の文様の衣を重ねて着せた様子を表しています。また、位を継ぐ儀式のときにもその衣を重ねて着たので、「重ねる」「受け継ぐ」という意味があり、「襲名」「世襲」のように用いられるようになりました。

Q 「えこひいき」の「えこ」って何?
A 「依怙」と書いて不公平を表す

「依」は、「依存」という言葉からもわかるように「よりかかる」「頼る」という意味です。また「怙」にも「頼る」という意味があります。合わせて、「よりかかり、頼りにする」ことを表し、転じて「一方をひいきすること」や「不公平」の意味になりました。このため、「不公平に特定の人だけをひいきする」ことを依怙贔屓というのです。

Q 「羽目をはずす」の「羽目」って何?
A 馬の口にはめる「馬銜(はみ)」から転じた

 馬を制御するために、口にはめる道具を馬銜といいます。この馬銜をはずして馬を自由にしてしまうと、手がつけられなくなってしまいます。その馬銜が「羽目」に転じ、調子に乗って度を越すことを「羽目をはずす」というようになったといわれています。

Q 「私立探偵」はいるけど「公立探偵」はいないの?
A かつて警察官のことを探偵とよんでいた

 江戸時代、当時の警察官にあたる同心や岡っ引きのことを「探偵方」とよんだといいます。その名残から、明治時代に入っても警察官は探偵とよばれていました。つまり、探偵といえば公立だったのです。しかし、1895(明治28)年に元警察官の岩井三郎が日本初の私立探偵事務所を開業。山本権兵衛内閣が総辞職したシーメンス事件などで活躍しました。その一方で、警察官を探偵とはよばなくなり、「私立探偵」という言葉だけが残りました。

Q 「たそがれ」が夕暮れどきを表すのはなぜ?
A 「誰だあれは?」と夕方に言ったから

『万葉集』や『源氏物語』などには、人の姿が見分けにくい夕暮れどきに「誰そ彼(たそかれ)」とたずねる様子がみられます。「誰だあれは?」とたずねるこの言葉が、やがて夕暮れどきを表す言葉になりました。漢字表記の「黄昏」はもともと、午後7時から9時まで、または午後8時から10時までの時間帯をさす戌の刻を表す漢語です。

文/美和企画
※『みんなの漢字』2014年11月号より