広島がここ2シーズン続けてBクラスと低迷している中、鈴木は主軸として変わらずチームをけん引している。昨年も打率.300、25本塁打、75打点をマーク。5年連続の打率3割は球団史上初であり、5年続けての打率3割、25本塁打はNPB史上4人目だ(他は王貞治、落合博満、小笠原道大)。「神ってる」で全国区になったが、記憶だけでなく記録でも日本の野球史に名を刻んでいる。

「素晴らしい成績。チーム状況もあり、鈴木自身も勝利に貢献する機会が減った。3連覇時のインパクトはないが、打者としては文句なし。年始特番で『3割乗ったら試合休んだくせに』とからかわれていたが、関係ない。見続けていたら分かるが、存在感はチームイチです」(広島担当記者)

「長打率にこだわりを持っていたが、高くなかった。ゴミみたいなシーズン」と鈴木は自虐的に語る。本人は長打率.544(リーグ6位)に不満なようだが、周囲は凄さを分かっている。『リアル野球BAN』(テレビ朝日系)において、とんねるず石橋貴明にイジられるのも超一流選手の証だ。

「以前は足のケガで下半身をかばううちに、上半身に頼った打撃になっていた。手元ギリギリまで引き付けて、上半身でぶっ叩くように打ち返す感じ。上半身が強くなった結果、上下のバランスが崩れスイングも安定性を欠いた。簡単に内野フライを打ち上げるのが目立ったのはそのため。以前のままでは米国で力負けしたり、変化球に苦しみそうだった。しかし本人が気付いたのか、修正されて来て良い形になっている」(MLBアジア極東担当スカウト)

 長打率こそ下がったが、打撃の安定性は格段に上がった。バランスの良い完ぺきに近い身体を作り上げたことがスイングの安定性にもつながった。高校時代は投手だった肩の強さは折り紙付き。内野守備もこなせるフットワークや柔軟性もある。足の不安がなくなれば、三拍子揃った『アルティメット』な選手となれる。

「セイヤ・スズキは、イチロー以降で最も成功する日本人野手になるだろう」(12月10日/スポーツメディア『ジ・アスレティック』アンドリュー・バガリー氏ツイッター)

 米国内でも鈴木の知名度が日増しに高まっている。コロナ禍で昨年はマイナーリーグが中止となった米球界。この先も流動的で、従来のようにプロスペクトを傘下で育成してコールアップするのではなく、即戦力になれるNPBトップ選手を補強するのも一つの策となりそうだ。

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イチローとまでは言わないが…