■冨岡義勇は無口で口下手?

 胡蝶しのぶによる義勇への言葉を整理してみると、どうやら義勇には、「言うべきことを、言うべきタイミングで話そうとしない」という言葉足らずな部分と、ひとたび説明をはじめると「無駄と思える話を挿入してしまう」空気の読めなさがあるようだ。

 しかし、義勇がはじめて竈門兄妹に遭遇した際には、整然と「鬼」の説明をなし、炭治郎が妹を守るために「足りないもの」を正確に言い当てている。あの有名なセリフ「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」は、その際に義勇の口から発せられた言葉だ。

 また、義勇は竈門兄妹を保護するため、自分の師である鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)に、「鬼(=禰豆子)を殺さない」という異例中の異例の処遇を認めさせ協力をあおぎ、さらに、鬼殺隊総領の産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)に対しては、鱗滝と連名で、自らの切腹をかけて炭治郎・禰豆子の助命を嘆願している。これらの場面から判断すると、義勇は「いつも言葉が不足している」わけではないようだ。では、義勇の「失敗」はどんな時に起きるのか。

■柱たちに「叱られる」冨岡義勇

 前述のしのぶからの「嫌われている」発言の場面以外にも、義勇が他の柱たちから口々に叱られるシーンがある。それは「緊急柱合会議」での出来事だ。産屋敷耀哉の妻・あまねが退出した時点で席を立とうとした義勇に、風柱・不死川実弥(しなずがわ・さねみ)が「おい待てェ 失礼するんじゃねぇ」「俺たちを見下してんのかァ?」と呼び止める。ここでは、蛇柱・伊黒小芭内(いぐろ・おばない)からも「貴様には柱としての自覚が足りぬ」ととがめられ、しのぶからは「さすがに言葉が足りませんよ」とたしなめられる。そして、古参の柱である岩柱・悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)にも「座れ」と叱られてしまう。

 義勇に対する、他の柱たちからの非難は「柱のひとりであるにもかかわらず、他の柱と交わろうとしない、その行動はいかがなものか?」という問いからわき起こるものだろう。

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胡蝶しのぶとの「共通点」