■進学校・御三家を狙うならば……

 高学歴を目指し、とにかく進学校・御三家を狙うならば、SAPIX一択、なのだそう。ただしここは親が子どもを支える前提であり、親の負担も相当かかってくることを覚悟しなくてはなりません。ちなみに最近では、SAPIX の中でも優秀な先生たちが作った「グノーブル」という塾が現れ、注目されています。 

 早稲田アカデミーは、とにかく体育会系なのが特徴で、勉強させる量がかなり多いようです。しかし最近では、そうした体育会系すぎる体質を変えようとしている傾向がみられるのだとか。

 首都圏模試センターの偏差値と、塾内での偏差値を比較すると、これら塾がどのように違うのかが顕著に分かります。たとえば、毎年のように東大合格者ナンバーワンをもぎ取っている開成中学校は、首都圏模試センターの模試では偏差値78です。しかし、四谷大塚の中では偏差値では71、SAPIXでは偏差値66になり、ずいぶんと数値が変わります。

 首都圏模試センターでは偏差値70である芝中学校は、 四谷大塚では偏差値59になりますが、 なんとSAPIX では偏差値51になるのです。つまり、SAPIX内では、芝中学に合格するレベルの生徒が「普通」なわけです。

 これら四つの塾は、首都圏にはたくさんありますが、静岡のような地方にはなかなかありません。 

 では、静岡から東京の中学に合格した人はいったいどうしていたのか、疑問に思って話を聞いてみると……みんなから、「東京まで塾に通っていた」という恐ろしい答えが返ってきました。塾だけ見てもなかなかキツいお値段なのに、そこに交通費が加わるわけです。

■コロナ禍で進んだ塾の映像授業……

 ただ、今はコロナのせい(おかげ?)で、塾がこぞって映像授業に力を入れています。そんなわけで、塾講師の知人に、「映像授業って実際のところどうなんでしょう?」と尋ねてみました。するとその人が言うには、「実は昔、どこの塾も導入したことがあるのだけれど、盛大にコケた」、なんて歴史があるそうです。

 失敗した理由は、小学生のような小さい子だと、「自分が授業を聞いているかどうかが、自分でも分からない」から。単純に認知能力がまだ発達していないため、実際の授業より緊張感がない映像授業では、「聞いていないのに聞いたような気分になってしまう」みたいです。

 ただし最近は少し様式が変わり、自立型の塾というものが生まれています。授業は映像を使うけれど、そばに先生がいて、分かっているかを確認し分からないところを教えてくれる、というスタイルのものです。これならば緊張感が保てるし、自分がきちんと聞けていたかどうかも判断可能です。

 しかしやはり地方だと、その映像授業すら流してくれる場所があるかどうかはまだ不明です。こうして、お受験と塾の情報をかき集めた末に、私が抱いた感想は、「こうして首都圏と地方で教育格差が広がっていくのかなぁ……」というものでした。とりあえず、映像授業のこれからの展開に期待しています! 

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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