いきものがかりのリーダーをつとめ、作詞・作曲を担当する水野良樹さんは、都内の私立大に通いながら“仮面浪人”をし、一橋大学に入学した経歴を持つ。現在発売中の『国公立大学by AERA 2021』(朝日新聞出版)で、受験での苦労や大学時代を振り返り、受験生に伝えたいことを語った。
「音楽でご飯が食べられるようになった頃、周りからよく、忙しいんじゃないの?と聞かれました。でも、仮面浪人をしていた1年間のほうが断然忙しかった」
いきものがかりのリーダー、水野良樹さんは当時のことを振り返り、笑った。都内の私立大に通いながら、一橋大学社会学部をめざしていたときの話だ。
「一橋大に特別な思い入れがあったわけではありません。もともとものごとを考えることが好きで、なんとなく社会学を学びたいと思っていました。関東の首都圏の国立で社会学部があるのは一橋くらい。正直、自分の学力とはかけ離れた目標でした」
残念ながら、現役時代は不合格という結果になり、私立大に通うことになった。しかし、「特別な思い入れはない」と言いながらも、「一橋に行きたい」という思いは消せなかった。
■なにもかも中途半端 ひとつでも頑張りたい
「中学では好きで始めた野球を、顧問の先生と衝突したことでやめてしまいました。高校では、いきものがかりとは別にやっていたバンドで大会に出たら準決勝敗退。なにもかも中途半端でした。一生懸命頑張ったことがないまま大人になるのはよくないな、と18歳ながらに思ったんです。一度めざした大学、やっぱり頑張ってみたかった」
両親に打ち明けると、「浪人は君のわがままだ」と一蹴された。正論だとは思いつつ、諦めきれなかった。そこで水野さんは、この後3年間私立大に通い続けた場合にかかる学費と、4年間国立大に行った場合の学費を概算。国立大のほうが安いことを両親にプレゼンした。
「受験にまつわる代金や予備校費用は自分で払うから仮面浪人させてくれないか、と頼み込み、納得してもらいました」