ですから、親は点数に影響を受けないように、自分を子どもと切り離してとらえ、どっかりと構えていないと駄目なのです。 

 牧さんが予備校講師をやめた理由の一つは、そんな親への精神的なケアが関係しているのだそう。「受験期の親は心が安定していなければいけないのに、予備校はわざと恐怖訴求をつかってくる、つまり『これをやらないと受からない』と、親が不安になるような言葉で煽(あお)って問題集を買わせようとするわけです。

 商売という点では仕方がないのかもしれませんが、 それならば自分は予備校にいるよりもコーチングという形で親を支えたいと思った」とおっしゃっています。 
 
■「命令されるとやる気をなくす」リアクタンスという心理

 牧さんは、親子の信頼関係を築き、足並みをそろえて親子がピタリと同じ方向に向いた時に、子どもは最大のパフォーマンスを発揮することができると断言します。親が子どもに「勉強しなさい」と言ったからといって、子どもががんばれるわけではありません。

 心理学的に、「命令されるとやる気をなくす」というリアクタンスも生じますし、嫌々勉強をしているようでは、受験合格までに必要な莫大な勉強量は到底こなせません。

「受験では、点数を上げることも重要ですが、子どものようすを見ていく親のメンタルも同じように大切です。子どもに勉強しなさいと怒ってしまうのも、『子どもをしっかり育てなくては』という強い責任感や焦りが根底にあるから。しかしその気持ちの向き合い方が間違ってしまえば、お互いにとって悪い結果しか出せません。だからこそ、まず親が教育に対する価値観をガッチリと固めることが、子どもの勉強をがんばるための土台を作ることにつながる、と言えるわけです」(牧さん)

 また、ある程度の偏差値以上の子をもつ親にも、共通点が見られるといいます。それはなんと、「わりと放任主義」であることなのだそう。勉強が得意な子の親は、上記したように、子どもにガミガミとお説教をして勉強させようとはしないのです。

 でもそれなら、「東大理三に兄妹を全員入れたことで有名な佐藤ママってどうなの? 子どもに色々とやらせていなかった?」と疑問に思いませんか? 

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