■勉強をしたいと思うように仕向ける

 その点を質問すると、牧さんの見解では、「佐藤ママは、勉強を無理やりさせているのではなく、したいと思うように仕向けている」のだそうで、「それが彼女の、受験生の親としてすごいところ」とのこと。その点を意識しながら佐藤ママの本を読みかえしてみると、なるほど、彼女の子どもたちからは、勉強を無理やりやらされているという印象は受けませんでした。

 牧さんはこのような相談のほかにも、子どもが現在通っている塾が合っているかどうかという、セカンドオピニオン的な相談にものっています。それこそ予備校にいた頃は、生徒に「ここの塾は合っていない」「別の塾にいったほうが伸びる」と思っていても、それが言えないという歯がゆさに苦しんだそうです。

 こうした提案も、フリーになったからこそできるようになったといいます。さらに3人以上の人数を集めれば、ママに向けたセミナーも行っているとのこと。発達障害や不登校など、教育に関する様々な活動をされています。(詳しくは https://www.original-education.com/) 

 牧さんからくわしくお話を聞いて、私も、「早いうちからうまく息子と対話できるようになっておこう!」と思いました。しかし、息子に、「今日は学校どうだった? どんなことをやったの?」と聞いても、毎回、「ええとね……忘れちゃった」と言われます。記憶力の問題なのか、単に面倒くさいだけなのか、どちらにしても残念な会話です。

 先日は授業中に、お道具箱からセロハンテープを取り出して、ずっと体や顔にペタペタ貼って遊んでいたと先生からお知らせがきました。私が、「なんでそんなことをしていたの?」と聞くと、「自分でもわからないけど、なんだか楽しいかと思った」と……小学1年生の男の子って、みんなそんな感じなのでしょうか……? 

 とりあえず勉強以前に日常の会話を成り立たせ、心を通わせて理解するところから始めたいと思ったのでした。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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