ピラティスの様々な効果については、ランダム化比較試験が行われ、論文として発表されています。例えば、トルコのイスタンブールメディポール大学のEsraAtilgan氏らが肩に痛みのある患者に対するピラティスの効果を確かめた報告によると、ピラティスを行う群とストレッチなど従来の運動を行う群に分けて週5日間の計10日間のエクササイズを行なったところ、ピラティスを行なった群は肩の痛みや痛みによる障害を軽減・改善を認めたと言います。

 また、トルコのパムッカレ大学のRaziye氏らが座りっぱなしの肥満女性の体組成に対するピラティスエクササイズの効果を調査した結果によると、週3回の8週間のピラティスを行う群といかなる運動もしない群(対照群)に分けて体組成の変化を確認したところ、ピラティス群では、体重・BMI・体脂肪率・ウエストや腹部、ヒップ周りの長さがトレーニング後に有意に減少し、対照群では腹部と股関節の長さが有意に増加したと言います。

 幸福度とうつ病に対するピラティスの影響を調査した論文もありました。イランのラフサンジャーン医科大学のAli氏らが62歳以上の高齢の女性を対象に毎週3回、8週間ピラティスを行う群と対照群に割り当て、介入から1ヶ月後と2ヶ月後に評価したところ、平均幸福度は対照群と比較して有意に増加し、抑うつ度のスコアは対照群と比較して有意に改善したことがわかったのです。

 ピラティス氏は、「10回で違いを感じ、20回で見た目が変わり、30回で身体のすべてが変わる」という言葉を残しています。ピラティスを始めた当初は半信半疑でした。最初はマシンの操作になれるのも難しかったのですが、10回ほどピラティスのレッスンを受けたあたりから、肩こりがなくなりました。そして、15回ほどしたあたりからでしょうか、前傾だった姿勢も改善されてきました。有酸素運動もしたくなり、今では毎日30分程度ですが、ウォーキングも始めました。そのおかげもあってか、冷えを感じることは少なくなり、身体が軽くなってきた気がします。

「身体のすべてが変わった」と感じるまで、ピラティスを含めた運動習慣を続けてみたいと思っています。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

著者プロフィールを見る
山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈の記事一覧はこちら