賃金にも必要なところに備える「手当て」がある(イラスト/桔川伸)
賃金にも必要なところに備える「手当て」がある(イラスト/桔川伸)

 日ごろから、よく使われている言葉の中には、昔は違う意味で使われていたものが数多くあります。それらは漢字からたどっていくと、もともとの意味がよくわかります。今回は、そんな昔と意味が変わった言葉の漢字うんちくを紹介します。

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1.せいぜい=精精
~「せいぜい頑張って」は皮肉の意味ではない!?

「せいぜい3日もあれば十分だ」というときの「せいぜい」は、漢字で「精精」と書きます。この場合は、「十分に多く見積もっても」「たかだか」という意味で用いられています。しかし、「精」にはもともと「力を尽くす」という意味があり、二つ重ねた「精精」は「力の限り」「精いっぱい」が本来の意味です。したがって、「せいぜい頑張って」と言われると、皮肉を言われたように感じる人が多いかもしれませんが、本来は「精いっぱい頑張って」という激励の意味なのです。

2.はしゃぐ=燥ぐ
~乾燥する意味から浮かれる意味に広がった

 漢字の「燥」が表すように、もともとは「乾燥する」という意味があります。「うかれさわぐ」意味に広がった理由は諸説あります。気分が沈むことを「湿る」や「湿っぽい」ということから、反対の「乾燥する」という意味の「はしゃぐ」が、気分が上がること、すなわち「浮かれる」ことを表すようになったといわれています。

3.のんき=暖気
~中国の「暖かい気候」が日本では「気晴らし」の意味に

「呑気」や「暢気」とも書きますが、いずれも当て字です。「暖気」はもともと、中国で文字通り「暖かい気候」の意味でした。それが日本では「気晴らし」の意味で使われ、さらに人の気性に用いて「のんびりしているさま」や「ものごとにとんちゃくしないさま」を表すようになりました。

4.ひきょう=卑怯
~もともとは詩の面白い表現だった

 漢字表記は本来「比興」だったといわれています。「比興」は、中国最古の詩集の『詩経』で、比喩表現のうち「直喩」を「比」、「隠喩」を「興」とよんだことに由来する言葉です。「比」も「興」も詩に深みをもたらすことから、合わせた「比興」は「面白い表現」の意味になりました。それが、「ばかげている」「卑劣だ」というマイナスの意味を持つようになり、「卑怯」の字が当てられるようになったと考えられています。

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「支度」の「支」も「度」も「はかる」意味から