吉田輝星は最後の一人エース? 控えにもドラフト候補がいる“複数投手制”が顕著に (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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吉田輝星は最後の一人エース? 控えにもドラフト候補がいる“複数投手制”が顕著に

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2年前の甲子園で大きな話題となった金足農・吉田輝星の熱投 (c)朝日新聞社

2年前の甲子園で大きな話題となった金足農・吉田輝星の熱投 (c)朝日新聞社

 また他にも最速153キロを誇る加藤翼(帝京大可児)や甲子園の交流試合で注目を集めた大型右腕の嘉手苅浩太(日本航空石川)、北陸ではその嘉手苅と並ぶ大器と言われている佐伯成優(高岡第一)なども、エース番号は背負っているものの、一人で1試合を投げ抜いたような経験はほとんどないという。

 また東北でも屈指の好投手である佐々木湧生(ノースアジア大明桜)は9月5日から東京ドームで行われる東日本のプロ志望高校生合同練習会に参加を表明しているが、夏の秋田大会では状態が万全でないということもあってわずか1試合の登板に終わっている。そして控え投手の長尾光、橘高康太もプロから注目を集める好素材で、スカウト陣からはローテーションを読んで全員を視察するのは難しいという声も聞かれた。

 他にも健大高崎では下慎之介、橋本拳汰、鈴木威琉の三人、敦賀気比も笠島尚樹と松村力、都城東も有馬太玖登と和田颯斗と複数の投手がプロ志望届を提出しているケースが非常に目立つ。今年は公式戦の少なかった特別な年ということもあるかもしれないが、理由はきっとそれだけではないはずだ。

 指導者の意識が変わってきていることももちろんだが、SNSの広がりなどもあって以前と比べて高校野球に関する情報が多く広がるようになり、有力な中学生投手が酷使されることを避けるために、きちんとした管理をしているチームや他にも力のある投手がいるチームを選ぶようになったことも大きいのではないだろうか。

 投手は先発完投、一人のエースがチームの命運を握るという時代は完全に過去のものとなった感が強い。近い将来、公式戦に登板しないまま高い順位でプロ入りする、そんなケースが出てくることも十分に考えられるだろう。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。


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