新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活に対する価値観を根本から変えるだろう。その変化は、不動産の資産価値にも少なからぬ影響をもたらすことになるはずだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、「コロナ後」の不動産市場の行く末を綴った。
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「コロナ後」には生活の基盤である衣食住の「住」にあたる不動産に対する意識も大きく変わるのは間違いない。特に顕著となるのは、高値を続ける首都圏のマンション市場へのダメージだろう。プチバブルともいうべきマンション価格は下落基調となり、マンションあるいは「タワマン」という住形態そのものへの危機感が強まる可能性が高い。
2013年に日本銀行が異次元金融緩和を始めて以来、東京の都心やその周縁部のマンション価格は新築、中古にかかわらず上昇を続けた。
ただし、それは「実需」による上昇ではない。つまり、多くの人がマンションを買いたいのに、市場に供給される新築や中古マンションの戸数が少ないから価格が上がったわけではない。市場には新築も中古も在庫が山にように余っている。
この7年間、都心のマンションは「これから値上がりするだろう」という購入者の期待を込めた価格で市場が形成されてきた。要するに、市場価格には投資的な要素が多分に反映されていたのだ。
そうした物件の多くは、新築であれば物件の引き渡しを受けた直後に「新築未入居」として売り出されたり、賃貸に出されたりしてきた。あるいは、値上がりを待って、空室のまま使われないままになっていた。
そして、少なからぬ人が値上がりしたマンションを売却することで利益を上げてきた。また、国内で買える元本保証されたどの金融商品よりも高い投資利回りを得てきた。空室の物件は、値上がりをじっと待ちながら、管理費や固定資産税などの維持費が負担されてきた。
つまり、都心やその周縁エリアのマンションは、なかば金融商品として売買されてきたのだ。それも多くの人に、元本(買値)が毀損(値下がり)しないタイプの金融商品だと捉えられてきた。