これが、首都圏のマンション価格が29年ぶりの高値をつけていた(2020年1月 不動産経済研究所調べ)大きな要因である。

 それが新型コロナウイルスの危機によって、状況が一変した。

 この先、都心のマンションは金融商品ではなく本来の「住宅」としての姿に戻るだろう。そして、多くの人がマンションを金融商品として捉えるのは、あまりにもリスクの高い投資であるということに気づき、「住宅」として適正な価格に収束していくだろう。

 その理由はこうだ。

 まず、マンションは株や債券、投資信託のようにすぐに換金できないからだ。東日本不動産流通機構が4月10日に出したリポートによると、3月の首都圏の中古マンションの成約件数は3642件で、前年同月比11.5%減となった。しかも、2月よりも成約数が減っている。例年、引っ越しシーズンである3月は1年間で最も成約数が多いのだが、今年はそうなっていない。

 これは明らかにコロナの影響である。4月はさらに減るであろうことは確実だ。何といっても三井のリハウスや住友不動産販売といった仲介大手が緊急事態宣言によって営業を自粛している。これでは成約数など伸びるわけがない。つまり、マンションの売り手にとっては売りたくても売れないのだ。株や投資信託は今でも普通に売却・換金できているのだから、「金融商品」としての差は歴然である。

 そうなると、今後は中古マンションの価格下落が確実となる。そもそも、市場では中古マンションが数多く売り出されているが、売り手のほとんどは個人だ。中には緊急事態宣言で先行きを過度に悲観したり、リストラや所得の伸び悩みで住宅ローンの返済に困窮したりで、売り急ぐ人も出てくるだろう。

 緊急事態宣言が解除され、仲介活動が再開されたとしても、そうした人は「安値でもいいから早く換金したい」と考え、市場はそういう売りに引きずられて相場を下げる。

 相場が下がると、ここ数年間に値上がりするとの思惑でマンションを購入した人は、投資原価を割った価格での売却を余儀なくされる。つまり、金融商品だとすれば「元本割れ」となる。まさにリスク商品そのものだろう。

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タワマンが「事故物件」扱いに?