さらにウイルス脅威時代に特有の、大きなマイナス要因が発生する可能性がある。

 政府は感染防止のために「密閉」「密集」「密接」の3密を避けるように呼び掛けている。この3密が絶対避けられないのがタワマンのエレベーターだ。高層階に住む人は、生活の中でエレベーターの利用は避けられない。通勤・通学、買い物など何をするにもエレベーターを使う必要があるので、あの密閉空間にいる時間が長い。

 タワマンのエレベーターがクラスターになったというニュースは、まだ見かけない。だが4月上旬、岐阜県の飲食店ではエレベーターで感染したとしか思えないケースが発生している。いずれ、首都圏のどこかでエレベーター内における感染が起こる可能性は低くないだろう。

 仮にエレベーター感染が起こったマンション名が市場に知れた場合、その物件は最低数カ月間は「事故物件」扱いだろう。

 さらに、タワマンのエレベーターではクラスターが起こりやすい、という風評が広がったらどうなるのか。多くの人がタワマンという住居形態自体を避けるようになる。そうなれば需要は先細り、とても今のような高価格は維持できなくなる。

 そう、新型コロナウイルスはマンション市場の風景を変えるのだ。

 私自身は、マンションが「金融商品」から本来の「住宅」の姿に戻るのは健全な動きだと考えている。また、タワマンのという住形態にはそもそもさまざまなリスクが含まれているとも思っている。

 コロナ禍を奇貨として、ここ7年で蓄積してきた不動産市場の「ひずみ」が是正されるのであれば、それもまた時代の必然ではないだろうか。(住宅ジャーナリスト・榊 淳司)