夫はもちろん仕事をしていましたけれど、人生に何が起こるかわからないということは、子どもの頃から痛いほどよく知っている私です。「大丈夫な暮らし」が突然「想像もつかないほど大丈夫ではない暮らし」になることも、骨身にしみています。

「手に職をもって、自分のことは自分で食べさせていく」

 そのためには「会社」というところでもっともっと経験を積んで、実績を積み上げていくことのほうが先。多少の困難にめげてはいけないし、そもそも子育ては永遠に続くものではない。そう思ったら、突き進むこと以外あまり考えなくなりました。

 生きていく中で壁にぶち当たったとき、ひとはどうしても、その壁が半永久的に自分の前に立ちはだかるもののように思いがちです。でもちょっと冷静になって考えてみると、永久に状況が変わらないことなど、実は存在しないのです。

 自分の意に反したつまらないことや、未知のことに対して決断を迫られる。そういう局面は、人生にはつきものです。でも、それまで積み上げてきた実績があるのなら、どうか途中で放り出したりしないでください。

 実績の上に新たな経験を積み上げていけば、ある時点で必ず、目の前に広がる色は変わってきますから。

 山は高いところに行けば行くほど、眺めがよくなるでしょう?

 ただ、上に行くまでの道にはとんでもない急斜面があったり、大きな溶岩の塊があったりするものなのです。

 自分はいまそこを通過しているのだ。

 そんなふうに、考えてみてほしいと思います。

【しなやかに生きる知恵】
投げ出すことは簡単
続けることこそが自分を次のステージに押し上げる

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小林照子

小林照子

小林照子(こばやし・てるこ)/美容研究家。ヘア&メイクアップアーティスト。1935年、東京都生まれ。東京高等美容学院を卒業後、小林コーセー(現・コーセー)に美容部員として入社。数々の大ヒット商品を手掛け、85年、同社初の女性取締役に就任。その後独立・起業し、美容ビジネスの企業経営や後進を育てる学校運営をおこなっている。『人生は、「手」で変わる。』(朝日新聞出版)、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)、『小林照子流 ハッピーシニアメイク』(河出書房新社)ほか著書多数

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