「ねたみ」が「公平感」をもたらす? 狩猟採集時代から必要な感情だった理由

子どもの素朴な疑問に学者が本気で答えます

教育

2019/10/12 16:00

 この時代に人々が獲得した感情が、公平感です。誰かが食べ物をひとり占めにしていたら許さない、という心理です。考えてみると、ねたましさは、公平を実現するひとつの手段です。ひとり占めが起きていたら、周りで協力してきた人々が「こちらにも分け与えないとひどい目にあうぞ」と圧力をかけたのです。実際に圧力をかけなくとも、ねたましさを感じそうな人が周りにいると思うだけで、ひとり占めにしていた人は、皆に分け与えるよう行動を変えるでしょう。

 つまり、ねたましさは、公平に分けることが常識となっている集団で、ひとり占めしていた人の利益を、皆へ分けるようにうながす感情なのです。よく賞をもらったら、お世話になった人々にお礼をしなさいと言われますが、ねたましさをやわらげる方法としても知られています。仲間だったら誰かの利益は皆で分け合おうというのは、感情的には理想の姿なのです。

 では、あなたが属している集団は、公平に分けることが常識となっている集団でしょうか。あなたの家族ならそうかもしれませんが、あなたの学校のクラスは違うでしょう。もっと広く社会のさまざまな集団についても、公平に分けることはもはや常識ではありません。

 人類は、狩猟採集時代から文明の時代になるにしたがって、集団の仲間で公平に分けるという考え方を徐々に捨てて、利益は個人に属するものという考え方を広げてきたのです。集団のメンバーが変わりやすければ、そのほうが便利なのです。近年のネットを通じて遠くの人とも気軽に友達になれる社会では、逆に近くの人々との仲間意識がますます希薄になってきています。

 もはや、ねたましさは過去の遺物になりつつあります。どんなにねたましさをぶつけてみても、その人がもっている利益を分けてくれるとは考えにくいでしょう。そればかりか、ねたましさを示す人は、いやがられかねません。このように考え、ねたましい気持ちがわき上がってきたら、いち早く楽しいことをして、その気持ちをやり過ごすことです。自然にしているとねたましい気持ちが大きくなってしまいますので、意識して小さくする努力を重ねてください。

【今回の結論】ねたましさは、狩猟採集時代には利益を仲間で分け合う働きがあったが、現代では役割がうすれている。ねたましい気持ちが大きくならないように工夫しよう!

石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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