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現役医師の本音 なぜ医療に「奇跡が起きる」と期待してはいけないのか?

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

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大塚篤司dot.#ヘルス
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 大きな病気、治らない病気にかかると、わずかな可能性を信じて治療したいと考える人は多いでしょう。医療に「奇跡が起きる」と期待することは、正しいことなのでしょうか? 好評発売中の『心にしみる皮膚の話』著者で、 京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が自身の体験をもとに語ります。

*   *  *
 私は医学部を目指して浪人生活を送っている間、病気で入院中の彼女がいました。その人の病気を治したくて、一生懸命に勉強しました。

 浪人生の私には、彼女の病気の正体がいっさいわかりませんでした。そして、浅はかなことに、医学部に入り医者になれば彼女の病気は治せると、本気で信じていました。

 当時は千葉の実家から東京都内の予備校まで1時間の通学。往復の電車の中では徹底的に暗記科目に取り組み、寝る間を惜しんで問題集を解きました。

 一日のうち、寝る時間と食事をとる時間など、生きるうえで最低限必要な時間以外はほぼすべて勉強に費やしました。

 1分すらもったいないと感じるところまでストイックに自分を追い込んで勉強しました。

 予備校から電車を降りた家とは反対方向に、小さな神社がありました。あまり有名でない石畳の階段を少しのぼった上にある神社は、毎年家族で初詣にいく場所でした。

 予備校の帰り道、まず神社に足をはこび、50円のさい銭と彼女の病気の快方を祈るのが習慣でした。

 自分の健康と引き換えでいいので、彼女の病気がよくなりますように。

 当時の私は心の底から祈りました。

 集中治療室で危ない状態、という連絡がはいったときは、不安で押しつぶされそうになりながらも回復を信じました。次の日には病気が消えるような奇跡を願っていました。

 小説『新章 神様のカルテ』(小学館、夏川草介著)には、

「医療に、奇跡は起きない」

 との言葉が出てきます。

 当時の私がその言葉を聞いたら心底怒ったに違いないでしょう。「奇跡を信じて祈る人の気持ちを踏みにじらないでほしい」と。


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