三平:確実にNGなのは、YouTubeなど動画配信サービスや、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどSNSに動画をアップすること。逆に、写真を自分のアルバムなどに収録して個人で楽しむのはOKです。グレーなのは、メールやLINEでの個人または複数人への送信。第三者への提供行為を含む配信、という文言の解釈によっては禁止行為とみなされる可能性もあるでしょう。

 5項は立ち入り禁止エリアでの撮影の禁止、6項は宣伝や賭け事を目的とした情報収集、送信の禁止が記されている。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会戦略広報課の担当者は本誌の取材にこう回答した。

「客席での写真・動画の撮影および音声の録音は可能です。ただし、動画、音声は、公共のメディアやSNSでの拡散、メールも含めた電子的なメディアで配信、配布することは禁じられています。写真は、個人的、私的、非営利的かつ非宣伝目的ならSNS等で利用することができます。写真をメール等に添付することは問題ありませんが、個人利用から逸脱した使用はできません」

 一方、ラグビーW杯の撮影規定は、東京五輪とは少し異なる。写真、動画撮影が私的利用に制限されているのは同様だが、商業、販売目的でなければSNSでの配信などは規制していないという。

「2015年のW杯の際も動画投稿はありましたが、個人利用であれば問題ありません。望遠レンズの持ち込みも、他のお客さまの迷惑にならない範囲ならば、特に規制はしていません」(ラグビーワールドカップ組織委員会広報課)

 どこまでが「私的利用」とみなされるかは、撮影者側も慎重に判断をしなければいけないが、「ラグビーW杯や五輪会場で撮った写真は、自由に使っていいものではない」という認識を持っておくことが重要だ。

三平:この規約で事業者側が最も守りたい権利は、独占放映権と協賛スポンサーの利益でしょう。多額の資金援助をしたスポンサーだけが有する権利を観戦者が侵害しようとすれば、規約を盾に事業者が強硬な姿勢に出ることも考えられる。そうした権利侵害になっていないかは意識すべきでしょう。

 なお、『アサヒカメラ9月号』では、第一線のスポーツ写真家・水谷たかひと氏が、ラグビー写真の撮り方を基本からレクチャーしている。ルールとテクニックをしっかり学んだうえで、「一生に一度」の体験を存分に撮影し、楽しみたい。

取材・文=作田裕史(アサヒカメラ編集部)

※『アサヒカメラ9月号』から抜粋