31歳の山中は、今回が初のW杯出場。そう聞くと遅咲きに感じられるかもしれないが、実は早期から注目された華麗な経歴の持ち主だった。中学2年でラグビーを始めるや才能を発揮。東海大仰星高校時代は攻撃的なスタンドオフとして名を馳せ、花園で優勝。進学先の早稲田でも大学選手権で優勝し、在学中の日本代表入りを果たしている。

 ところが20代前半、口ひげを伸ばすために使用した育毛剤が原因でドーピング検査で陽性反応が出て、思いがけず2年間の資格停止を受け、2011年のW杯出場のチャンスを逃した。復帰後も厳しい状況が続き、2015年のW杯では、日本代表合宿に招集されながらも、最終メンバーに残ることができなかった。不退転の覚悟で臨んだ今回、ようやく手に入れたW杯出場の切符だったのだ。

 先述した通り、山中はフルバックでありながら、スタンドオフの経験から生まれるキックやゲームコントロールにも定評がある。188センチとバックスとしては長身なうえ、下半身をしっかり鍛えているため守備にも優れる万能型だ。

「ハイボールキャッチやキックといったフルバックの役割をしっかりやることをもちろん大切にしていますが、僕はボールを持って走るのが好きだし、得意ですね」

 この言葉通りの活躍をロシア戦で見せた山中は、『ラグビー日本代表写真ガイド RUGBY PHOTOBOOK & GUIDE 2019 JAPAN』のインタビューで、ラグビーを続ける理由と魅力について、次のように明かしていた。

「チームのために一人ひとりが体を張って、ひとつのボールを繋いでいくこと。人のために体を張ることなんて、なかなかないじゃないですか。それが、ラグビーっていいスポーツだな、楽しいなって感じる理由です」

 さらに山中は、「泥臭いプレー」こそが、日本の強みだとも語っている。

「低い低いタックル、あきらめずに動き続けるハードワーク、チーム力の高さ。ラグビーは日本人向きのスポーツだと思います(笑)」

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「目の前の1試合1試合が大事」