9月20日、いよいよ日本初、アジア初となるラグビーワールドカップ(以下W杯)2019日本大会が始まった。東京スタジアムでの開幕戦を飾ったのは、世界ランキング10位の日本と、同20位のロシアというカード。

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 しかし、先制点を取ったのはロシアだった。前半開始からわずか4分、高く蹴り上げられたボールを日本のフルバック、ウィリアム・トゥポウが取り損ねたのを攫うようにして、ロシアのウィングがトライへと持ち込んだ。赤と白の日本ジャージカラーに染まった観客席全体から、大きな悲鳴が上がる。

 体の大きいフォワードによる猛攻が続き、なかなか日本らしいプレーをさせてもらえない。前半11分、ウィング松島幸太朗がサイドでボールをもらって1トライを返すも、続くコンバージョンキックをスタンドオフ田村優が外し、ロシアに2点差でリードされる時間がしばらく続いた。

 だが、日本は徐々に本来の調子を取り戻す。松島が2トライ目をあげて12-7で前半を折り返スト、後半6分にはロックのピーター・ラブスカフニが抜け出して素晴らしいランを見せてトライへ。そして28分には、松島が3トライ目を決めてハットトリックを達成し、田村と交替で入ったスタンドオフ松田力也がコンバージョンキックを決めて30-10に持ち込むことに成功した。

 残り時間が少なくなり、再び猛攻を始めたロシアを押さえたのが、後半30分にグラウンドに入ったフルバックの山中亮平だ。

 ロシアの名スタンドオフ、ユーリ・クシナリョフが再三キックでエリアを稼ごうとするも、山中は自陣深くに飛び込んできたボールを確実にキャッチし、鋭いキックで押し返した。かつてスタンドオフとしてプレーしていたユーティリティプレーヤー(複数のポジションを務められる選手)ならではの、見事なキックだった。

 さらには、自らボールを持って突進し、エリアを大きく稼いだ。本領発揮。そんな言葉がふさわしいプレーだった。

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華麗な経歴も苦難の連続