この夏の甲子園でも、その「トレンド」を象徴しているかのような選手がいた。

 海星・大串祐貴。2番に座る左打者は、身長175センチ、体重78キロ。どっしりとした体型で、取材で向かい合ってみると胸板の厚さが目立つ、いかにもパワフルなタイプだ。5年ぶりに勝ち抜いた長崎大会6試合で「2番」を務めながら、犠打は「0」。甲子園初戦(2回戦)の聖光学院戦でも、6回に中押しとなる貴重な2点目をたたき出す本塁打を、右翼席へ運んでいる。

 高校野球らしからぬ、そして、今の野球界の時流に乗った「2番最強説」の象徴のような存在だ。

「メジャーでも、DeNAでも筒香さんが2番なんですよね。全く一緒な感じだなと思いました。うれしいです」

 大串はまんざらでもない表情で、自らの「2番」という打順を語ってくれた。バントのサインは出ない。バント練習もやらないのだという。つまり「思い切り打て」というのが、海星の2番に与えられた役割なのだ。

「最初は戸惑ったんですけど、自分の役割が分かってからは、しっくりきています。ホームランを打つと、チームが盛り上がりますから」

 さらに、このチームの面白いところは、4番に座る高谷艦太の存在だ。身長177センチで体重70キロの体は、グラウンドで見るとひょろりとした感じで、大串とは対照的な体型。こちらは、公式戦での通算本塁打は「0」なのだが、長崎大会6試合での犠打が「4」。つまり、4番の高谷の方がつなぎ役なのだ。

「自分は4番目。チームバッティングに徹すると決めています」

 バットを寝かせ気味に構え、グリップの位置も右胸の前。振り抜くというよりは、着実にミートすることを心がけたフォームは「もともと、遠くに飛ばせないので」。

 大串が本塁打を放った聖光学院戦でも、9回の3点目は、先頭の高谷が相手失策で出塁すると、二盗を決め、そこから5番・坂本芽玖理が二ゴロを放って三塁へ進塁、続く太田勇新の右犠飛で高谷が生還。つまり、4番を起点に、ノーヒットで決勝点を挙げるという機動力とチームバッティングでの「スモール・ベースボール」だ。

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偶然生まれた強打者の2番