メジャーリーグ、さらには日本のプロ野球の「トレンド」ともいうべき起用法がある。それが「2番・最強打者説」だ。
1番は足が速い、2番はつなぎ役。このコンビで得点圏に走者を送ってチャンスメークした上で、3、4、5番のクリーンアップに回していく。これが「攻撃のセオリー」でもあった。
このコンセプトが、今、まさに変わりつつある。
初回の攻撃から、必ず「最も打てる打者」が出てくるとなれば、相手はやりにくいという発想が前提にあるといわれている。一発の力を秘めた打者が、初回に必ず打席に立つ。走者がいなくても、本塁打なら必ず1点が入る。
ところが、塁に出て、送りバントで得点圏に走者を送るのは、相手にアウトを1つ、差し出すことでもある。だから「犠牲」という名がつくのだ。
そうではなくて、打て──。
メジャーでは、出塁率の高い順に打順を組むという発想もあるという。出塁率の最も高い1番、そして長打力のある「最強の2番」を組み合わせる。確かに、理にかなったシナリオでもある。
だから、なのだろう。大谷翔平の所属するエンゼルスは、3番にDHの大谷が座っているが、その前を打つ2番は現在のメジャーで史上最強といわれるマイク・トラウト。昨季までのメジャー8年間で240本塁打、今季も今月17日の時点で自己最多タイの41本塁打。とんでもないバッターが「2番」なのだ。
ヤンキースでも、かつては「ザ・キャプテン」と呼ばれたデレク・ジーターが、そして現在ならアーロン・ジャッジ。2017年には52本塁打の実績がある。ネームバリューも、勝負強さも兼ね備えた最強の打者が「2番」を務めるのが、メジャーのスタイルなのだ。
その流れは、確実に日本にも押し寄せている。
かつて「2番」といえば、通算533犠打の世界記録を持つ巨人・川相昌弘、あるいは中日・井端弘和に代表されるように、バントや右打ちなど「小技」の名手だった。
ところが、2019年、巨人の開幕スタメンは2番・坂本勇人。8月17日現在の136安打、32本塁打はいずれもセ・リーグトップの数字だ。日本ハムでも、長打力に定評のある大田泰示、さらに今季途中からDeNAの2番は筒香嘉智が務める機会が増えている。日本を代表する長距離砲が「2番」にいるのだ。こうなってくると「2番=バント」という概念など、どこにもない。