大串に、そして高谷に話を聞き、グラウンドでのパフォーマンスを見ていると、これまでの「野球」にあてはまるのは、2番高谷、4番大串だろう。「自分でも、そう思います。僕の方が“2番タイプ”ですよね」。高谷も笑いながら認めたほどだった。

 高校野球にも、2番最強説──。

 ところが、海星・加藤慶二監督に話を伺ってみると「こうなったのは、偶然的なものなんですよね。意図したわけではありません」と苦笑い。その内幕はこうだ。

 昨秋の新チーム発足当時、大串は4番を打っていた。ところが調子を落とし、春の大会ではレギュラーから外された。夏へ向け、メンバーを厳選していく中で、加藤監督は大串をメンバー外にするつもりだったという。

 3年生が夏を戦えないというのは、イコール、高校野球では「引退」を意味する。コーチ陣からの推薦で「引退させるつもりで、最後のチャンスを与えたんです」という5月中旬の合宿中に、大串をAチームの「2番」に起用すると、そこで結果を出し、レギュラーを再奪取した経緯がある。

「2番しか空いてなかったんです。上の打順に置かないと、練習試合で多く打順が回ってこない。そもそもの理由は、そこだったんですよ」と加藤監督。ところが、そこでピタリと「2番大串」がフィットしたというわけだ。

「結果的に、そこでバシバシ打っても、クリーンアップに戻すだけの理由もなかったんですよ。だから、もしバントが必要なら、大串には代打を出します」(同監督)

 けがの功名ともいうべきか、ひょうたんから駒なのか。

 しかし、この「最強2番」の打順で、海星は5年ぶりに夏の甲子園切符をつかんだのだ。さらに、甲子園で3回戦に進んだのは、怪物・サッシーと呼ばれた元ヤクルト・酒井圭一氏を擁してベスト4に進出した1976年以来、43年ぶりの快挙だった。

 8月16日の3回戦では、優勝候補の一角・八戸学院光星と互角に渡り合い、3点を先制しながらも逆転を許し、一時は3点をリードされた。ところが、再び追いつく粘りを見せた6回、同点の2点タイムリーを右前へ運んだのは「2番大串」だった。

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