その巨人には、1995年にヤクルトから加入したジャック・ハウエル以降、他球団のファンから強奪と揶揄されながらも、ロベルト・ペタジーニやタフィ・ローズ、李承ヨプなど数多くの助っ人たちが国内移籍を経てチームに加わった。2008年にはアレックス・ラミレスとセス・グライシンガーの投打の軸をヤクルトから、新守護神としてマーク・クルーンを横浜から奪い取ってリーグ優勝という成果を挙げたが、その一方で移籍で“失敗”した助っ人たちも多く存在する。

 “失敗”の筆頭として名前が挙がるのが、エリック・ヒルマンだ。ロッテ時代の1995年、96年に2年連続で2ケタ勝利&防御率2点台をマークして先発の柱として大活躍し、1997年に2年5億円で巨人に移籍したが、肩の違和感を訴え続けて1年目は登板わずか2試合のみ。

 さらに翌1998年は春季キャンプで「肩に小錦が乗っているようだ」と訴えて離脱しシーズン開幕後は一度も登板せずに5月に解雇となった。打者陣も多くの選手が巨人移籍後に苦労したが、近年ではルイス・クルーズが思い出される。ロッテで二塁手のゴールデングラブ賞を受賞して2016年に巨人に移籍したが、故障に続いて怠慢プレーが目立って期待を裏切る形に。移籍1年目は81試合に出場したが、2年目はわずか9試合のみの出場でチームを去った。

 現役では3人の選手を挙げたい。国内移籍が成功したと言えるのは、巨人からDeNAに移籍し、4年連続20本塁打以上を放ちながら頼れる主砲として活躍中のホセ・ロペス、そして広島、西武を経て加入したソフトバンクで絶対的守護神に君臨し、2017年にNPB歴代最多の54セーブを挙げたデニス・サファテの2人。一方、苦しんでいるのは2017年に中日でリーグ最多の35本塁打を放ちながらも、翌2018年に移籍した巨人では15本塁打に終わったアレックス・ゲレーロだ。まだ巻き返しのチャンスが残されているゲレーロには、今季、新天地を求めたガルシア、レアードとともに注目したいところだ。

 移籍は、大きなチャンスであると同時に、失敗するリスクも内包する、一種の“賭け”である。もちろん自信がなければその賭けには乗らない。そして国内移籍をする助っ人たちは、日本での経験、実績があるという点で、初来日する新外国人よりも一日の長がある。その信頼を結果に結び付けられた者が、今後も優良助っ人と言われ、球史とともに多くのファンの心にその名を残すことになるのだろう。