直近の発表では、グリコの新製品発売は、3月中に間に合いそうだという。昨年8月に基準が設定された時には、メーカーはまだ躊躇していて、日本乳業協会の見通しでは、各社が製品の販売を開始するまでには最短で1~2年かかると報じられていた(Bloomberg)。そこから考えれば、かなりのスピードで対応したという印象だ。

 私がグリコが液体ミルクを作るというニュースを知ったのは、昨年12月に朝日放送テレビの「キャスト」という番組に出演した時のことだ。その時、私は、グリコが最初にリスクを取るのだから、他社が後追いして、過当競争で赤字になるようなことが起きると可哀そうだなと少し心配するようなコメントをした記憶がある。

 ところが、今年1月31日に厚労省は、グリコだけでなく明治に対しても乳児用液体ミルクの製造を承認したと発表した。グリコが125ミリリットルの紙パック入りで保存期間6カ月なのに対して、明治は「後追い」というイメージを気にしたのか、240ミリリットルのスチール缶で保存期間1年とする計画だという。どちらも常温保存可能だが、明治は、地震などの災害用により重点を置いたのかもしれない。

 なお、グリコと明治が作ると言っても、肝心なことがまだ明らかになっていない。それは価格だ。海外メーカーのものは、粉ミルクと比べると、かなり高価で、2倍から3倍にもなるそうだ。

 グリコと明治の価格戦略がどういうものかが気になる。需要は一定程度は確実にあるはずだが、あまり高いと、売り上げは相当小規模になって儲からず、儲からないから値下げもできないという悪循環になる。その結果、事業として成り立たないというリスクもないとは言えない。

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 国内での需要が小さいから値段が高くなるという障害を取り除くための方策としては、中国など海外市場への販売が考えられる。中国では、国産粉ミルクに有害物質が入っていて被害が出た事件もあり、それ以降、特に日本の粉ミルクへの需要が急激に高まっていて、ネット通販でもかなりの引き合いがあるようだ。ニュースなどで見た方も多いだろう。

 グリコなどが、液体ミルクを海外輸出すれば、粉ミルク同様、大きな需要をつかめる可能性は十分にある。明治などもそうした販売戦略を立てているという。

 ただし、一気に大量販売へと持っていくには、生産設備への大規模投資と価格の引き下げが必要で、リスクも大きい。民間だけでは、どうしても最初から大規模投資とはいかないかもしれない。

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政府に期待すること