──荒々しいスイングで20本塁打が見たい。

「とにかくバットコントロールが素晴らしいから、大崩れしない。例えばゴルフで70台で回る人が、いきなり100以上叩くなんてほとんどない。それと同じで実力があるから、シーズン終わった時にしっかりと結果を残すはず。とにかく技術に関していうことは何もないね」

 打撃技術の高さを絶賛してくれたのは東出輝裕打撃コーチ。

「鈴木誠也もそうだけど、本当のバットマンというか、素晴らしい打撃をする。もちろん天性のものもあるだろうけど、アマチュア、プロと完成型に近いものを作り上げてきた結果なんだろう。だから他の打者は、見るだけで参考になっていると思う」

「個人的には巧い打撃もそうだけど、もっと荒々しいスイングも見てみたい。あれだけの実力なら20本塁打以上は絶対に打てると思う。そういう長野を見てみたい気持ちもある。現状を見る限りでは、ここ数年で最高の成績を残しそうな気がする。そういう気持ちにさせてしまうほど素晴らしい」

 同じバットマンとしてポテンシャルの高さ、そして可能性の伸びしろを感じるからこそのコメントであった。

──世間に対して証明するには結果を残すしかない。

「チーム内の競争は前面に出してやっている。経験ある選手が必ずポジションを保証されるチームではない。若手、中堅、ベテランも競争の中からポジションを勝ち取ってほしい。長野もそういう考えでやってほしい」

 キャンプインに先立ち、緒方孝市監督は長野に関して語っていた。2月11日の初紅白戦への出場も厳命した。長野はキャンプを通じて監督の要望にも応え、実力で周囲を認めさせ始めている。

 長野久義。広島は間違いなく大きな戦力を手に入れた。

 仮にである。

 巷で噂されているように、自身が保有するFA権を行使して1年で巨人に戻ったとしよう。FA権は選手自身が勝ち取った権利であり、誰も口を挟めるものではない。しかし長野は、生え抜きで育った丸佳浩の人的補償で広島へやってきた。直前では同じく生え抜きである内海哲也の人的補償での西武移籍もあった。経緯を踏まえ、巨人復帰した場合の風当たりの厳しさは想像に難くない。

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本気になった長野は広島の大きな戦力