帰省シーズン前に準備をお忘れなく(写真:getty images)
帰省シーズン前に準備をお忘れなく(写真:getty images)
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、年末年始の帰省や旅行シーズンを前に、長距離移動時の感染症予防について、自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。

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 早いもので、2018年も残りわずかとなりました。年末年始に帰省される方もたくさんいらっしゃると思います。しかし冬場は一般的な風邪やインフルエンザ、ノロウイルスをはじめとするウイルス性胃腸炎など、感染症が流行する季節です。移動のためお子さん連れで新幹線や飛行機などの公共交通機関を利用する方も多いですが、病院もお休みになっている年末年始に、帰省先など普段と違う土地でお子さんやパパ・ママが体調を崩してしまうと大変です。今回は、長距離移動時の感染症予防について、お話していきます。

 まず、マスクについてです。

 マスクを喜んでつけてくれるお子さんなら、ぜひつけてあげてください。暖房で乾燥しがちな移動中も、鼻や喉の湿度を保ち、細菌やウイルスに対する防御力を維持することができますし、咳やくしゃみの飛沫を吸い込んで感染することを防ぐ効果もあります。

■長距離移動中にはウェットティッシュ

 しかし、なかなかマスクをつけてくれないお子さんや、赤ちゃんの場合は、マスクをつける必要はありません。風邪などの主な感染経路は接触感染だからです。唾液や鼻水のついた手で触られたドアノブ、手すり、つり革などを触ると、手にウイルスがつきます。そしてその手を洗わずに食事をしたり、小さいお子さんなら指しゃぶりをしたりすると、体の中にウイルスが入ってしまうのです。

 これを防ぐには、とにかく流水と石けんで手洗いすることが大切です。しかし、年末年始の長距離移動中、子どもが手すりを触ったり移動中におやつを食べたりするたびに手洗いをするのは、現実的に難しいと思います。そこでおすすめするのが、ウェットティッシュやおしぼりと、手指消毒用のアルコールジェルです。

 ウェットティッシュには除菌タイプのものなど様々な種類があります。除菌表示には、日本衛生材料工業連合会という機関の自主基準が定められており、一定の試験をクリアしたものにマークがつけられています。その試験方法を簡単にご説明すると、大腸菌や黄色ブドウ球菌をステンレス板に塗りつけて、除菌効果のない布とウェットティッシュでそれぞれ5往復拭き取った後、残っている菌量を比較するというものです。ウェットティッシュで拭き取った後の菌量が、除菌効果のない布で拭き取った場合の100分の1以下になっていれば、合格ということになります。

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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