もちろん、ソフトバンクには柳田悠岐(4億、一部で5億5千万との報道もあり)、摂津正(4億)、松田宣浩(4億)といった生え抜き選手もいる。どの球団でも移籍組は年俸が高くなりがちだが、ソフトバンクは生え抜き選手でも活躍をすれば、移籍組に劣らない金額を払う。年俸高止まりリスクがある複数年契約もいとわない。

 こういった強気な年俸が払えるのも、球団経営が黒字だからだ。九州での人気は絶大で、18年のソフトバンクの1試合あたりの平均観客数は3万6149人。これは、巨人阪神に次ぐ12球団中3位となっている。

 高年俸選手が多くいる一方で、ソフトバンクには育成ドラフト出身で活躍する選手も多い。エースの千賀滉大(1億2500万)や「甲斐キャノン」と呼ばれる捕手の甲斐拓也(4000万)が代表的だ。もちろん、そこにはスカウト担当の眼力やコーチの力量があるわけだが、球団の選手育成システムにも特徴がある。

 ソフトバンクは、今シーズン終了時点で育成選手が23人所属している。さらに育成ドラフトで4人を指名した。社会人野球チーム並みの規模である。

 ソフトバンクの次に育成選手の多い球団は巨人の20人(育成ドラフトでさらに4人を指名)。育成選手に対する球団の方針は各チームで異なっていて、日本ハムは育成選手の在籍はなしで、育成ドラフトでも1人を指名しただけだった。

 こういったことから、ソフトバンクはチームの底上げをFAや外国人のトレードに頼るだけではなく、日本国内から“ダイヤモンドの原石”を集めて鍛え上げていることもわかる。それが、ソフトバンクの「選手層の厚さ」につながっている。

 一方、広島の育成選手は5人、育成ドラフトでは1人を指名した。ソフトバンクや巨人に比べれば育成選手の数は少ない。それでも、広島が育成に弱いわけではない。広島はドミニカ共和国に「カープアカデミー」を所有している。カープファンなら、出身選手として1995年に15勝をあげたチェコ、日米通算で2000本安打を達成したソリアーノなどを思い浮かべる人も多いのではないか。現在の広島には、野手では今シーズンに25本塁打を放ったバティスタ(2200万)やメヒア(1200万)、投手ではフランスア(880万)がいる。

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黄金時代を襲う最大の危機