広島にとって悩ましいのは、丸だけではない。松山も今シーズンにFA権を取得し、来季には菊池、投手の野村祐輔(1億2000万)、強打の捕手の会沢翼(5000万)もFA権を取得する予定だ。どの球団も欲しがる選手であるばかりに、引き留めには多額の資金が必要となる。チームは好調でも、球団を経営する側にとっては悩ましい問題だ。

 一方のソフトバンクは、中心選手の高年齢化が最大のリスクとなっている。今シーズンにケガや不調で苦しんだ選手にも、ベテラン組が多かった。シーズンオフはFAなどによる補強に動くこともありえるが、若返りは期待できない。新たな黄金時代を築くために、あえて自球団に所属する有望な若手の育成で若返りをはかる戦略もありうる。方針がどのようになるかが注目される。

 ソフトバンクは今シーズン、苦戦した。昨年のMVPストッパーのサファテのほか、和田、摂津らもケガや不調で年俸に見合った活躍ができなかった。それでも最終的に2位でシーズンを終え、クライマックスシリーズで西武に勝利したのは、厳しい競争を勝ち抜いてベンチ入りした育成ドラフト出身の選手たちの活躍があったからだ。

 すでに日本を代表する投手となった千賀は、レギュラーシーズンは好不調の波が激しかったが、CSでは2試合計11回3失点と好投した。育成で同期の甲斐は、盗塁阻止率12球団1位の.447。昨年の育成ドラフト4位で、日本シリーズ第2戦で2回無失点の好投をした大竹耕太郎(600万)もいる。ケガで日本シリーズの出場はできていないが、千賀や甲斐と同期となる10年の育成ドラフト5位の牧原大成(1200万)は、夏場からレギュラーに定着して打率.317の好成績を残した。有望な若手選手は多い。

 両チームとも時間をかけて築き上げた常勝チームであるだけに、日本シリーズでは一進一退の攻防が続く。それだけに、シリーズの結果次第では今後の球団の戦略が大きく変わるかもしれない。そのような視点から日本シリーズを観戦しても面白いだろう。

※推定年俸は「2018プロ野球選手カラー名鑑 保存版」(日刊スポーツマガジン)から。カッコ内の数字は今シーズンの推定年俸の金額。

(AERA dot.編集部/西岡千史)