巨人や阪神などが獲得に興味を示している王柏融 (c)朝日新聞社
巨人や阪神などが獲得に興味を示している王柏融 (c)朝日新聞社
王柏融は所属チームLamigoでも看板選手として活躍 (撮影・石原幸晶)
王柏融は所属チームLamigoでも看板選手として活躍 (撮影・石原幸晶)

 プロ野球のペナントレースも最終盤に差し掛かり、今季限りでの引退を表明する選手のニュースも増える時期となってきた。その一方で来シーズンに関する話題も徐々に出始めている。特に優勝を逃したチームは、オフにどんな補強をするのかということも大きな関心ごとだろう。外国人選手についてはまだ情報が少ない時期ではあるが、そんな中で早くも注目を集めている選手がいる。それが台湾球界で活躍している王柏融(ワン・ボーロン)だ。
  
 王の名前が一躍知れ渡ったのは2年前の2016年。前年にデビューしたばかりのプロ2年目の23歳の選手がいきなり台湾球界史上初となるシーズン200安打をマークし、こちらも史上最高打率となる.414をマークしたのだ。この年は王以外にも二人が打率4割をクリアしており、史上稀にみる“打高投低”のシーズンだったが、王の勢いはとどまることを知らず、翌2017年も打率.407、31本塁打、101打点をマークし、リーグ史上二人目、台湾人選手としては初となる三冠王に輝いたのだ。この年に打率4割をクリアしたのは王だけである。またシーズン前に行われた第4回WBCの日本代表との壮行試合では則本昂大(楽天)からセンターに特大のホームランを放つなど3打数3安打3打点の活躍を見せ、侍ジャパンの投手陣を攻略して見せた。

 王の周囲が騒がしくなり始めたのはこの頃からである。リーグ戦では阪神西武巨人が相次いで現地視察に訪れ、メジャーのスカウト陣も姿を見せるようになった。今シーズンは4割を下回っているものの、3割5分前後の打率をマークし、リーグでも上位をキープしており、今月に入って阪神、巨人、オリックスが獲得調査に乗り出しているとも報道されている。では王は果たして日本でも通用するのか。少し気が早いが過去の成績とそのプレースタイルから占ってみたいと思う。

 まず王の体のサイズだが、公称では181cm、90kgとなっており、決して細身ではないもののプロではそこまで目立つような体格ではない。構えも少し重心を低くして背筋がまっすぐ伸びていないため、そこまで凄い力感は感じないというのが第一印象だ。同じアジアの左のスラッガーであるイ・スンヨプ(韓国・元ロッテ、巨人)の方が構えからスイングまでの迫力は上ではないだろうか。一方で王が優れているように感じられるのが、リストワークを生かしたバットコントロールだ。構えた時のグリップの位置が低く、タイミングをとるときに少しバットが揺れる動きがあるものの、振り出しはとにかくコンパクトで鋭く、ヘッドがきれいに抜けるようにスイングできている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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