湿度が非常に高く気温も35度近い、または体温を超えるような状況では、どんなに上手に水分補給をして、どんなに上手に汗をかいたとしても、体温はなかなか下がらないのです。

■熱中症予防の指標は「暑さ指数」

 熱中症予防のための指標として、1954年にアメリカで提唱され、現在は国際基準となっている「暑さ指数」(WBGT)があります。暑さ指数は、単なる気温ではなく、熱中症のリスクとなる湿度や輻射熱の影響を取り入れた指標です。

 2004年から07年にかけて、アメリカで、大学のフットボール選手の熱中症について行われた調査があります。その結果、暑さ指数が27.8度を超えると、熱中症のリスクが大きく増すことがわかりました。およその目安としては、湿度が40%の場合は気温30度でこの基準に達しますが、湿度が70%なら気温26度で暑さ指数28度に達します。

 環境庁の「熱中症予防サイト」(http://www.wbgt.env.go.jp/)で、試しに東京の暑さ指数を調べてみました。子どもの背丈を考えて、地表から50cmの高さでの指数を見てみると、例えば7月17日は7時過ぎから18時過ぎまで厳重警戒レベル(暑さ指数28~31度)を越えており、特に10時から15時は危険レベル(暑さ指数31度~)に達しています。そもそも日中は外で遊ばないなど、活動そのものを制限することも必要です。

 また、暑さ指数がさほど高くない場合も、スポーツをする際は、思っている以上にたくさんの水分が必要です。アメリカ小児学会の推奨では、9~12歳の子どもは20分ごとに100~250ミリリットル、中高生では1時間ごとに1~1.5リットルの水分補給が必要とされています。

 古い研究ですが、1980年にイスラエルの研究者が発表した論文もあります。10~12歳の11人の子どもたちに、気温39度湿度45%の部屋で自転車こぎ運動をしてもらいました。好きなときに水分補給してもらった場合では、定期的に水分補給を求めた場合の72%の量しか水分を摂取せず、1時間あたり体重の0.3%の割合で水分が失われていってしまいました。好きなときに好きなだけ水分補給するのではなく、上記のような目安をもとに定期的に十分な量の水分、とくに経口補水液のような電解質を含んだ飲料を飲ませることが必要です。

 まだまだ暑さは続きそうですが、児童館やショッピングセンター、室内遊び場などを活用し、安全に夏を乗り切りましょう。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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