後輩の話によると、そこで「今日も飲まなかった」という人はコインをもらうらしいんですよ。プラスチック製か何かの。それが貯まっていくと、これだけ飲んでいないんだと目で見えるようになる。そうやって治療をして、酒と離れていくんだそうです。

 約束の3年が今日で終わりだという日、会社と話して復帰の許しをもらった後輩が、急に泣きだしたんですよね。僕が仕事のことで注意していたときだったんですけど。急に何だと聞いたら、「実はずっと酒を飲んでいた」と言われました。えーーと思いましたね。実は3年の間にもいろんなトラブルがあったんです。俺が地方ロケに行っている間に俺の車をパクってどっか行ったり、お金の問題も嘘もあった。その度にしこたま怒って、でも「酒は飲んでいない」って言うから許していたんだけど……。裏切られる方の気持ちもわかります。

 我慢して断酒していたのは1年半ぐらいで、俺に仕事で怒られたりしているうちに嫌になって家に帰って飲んでたらしい。こういう治療って、なかなか難しいんだなーと思ったんですよね。恐怖とか力で抑え込むっていうのは無理なんだなとか、いろいろ考えました。そいつは結局、会社を辞めました。

 1番の難しさは、お酒って違法なものじゃないから手に入りやすいんですよね。1人なら隠れて飲めるし。そこを断ち続けるには、自分との闘いというか、生活態度の見直しが必要なんですよ。

 その人の依存度合いによっても違うと思いますけど、その後輩の場合は自分自身が分かっていなかったんです。周りはそう言っているけど、そんなはずはない。ちゃんと家まで帰れるし、楽しい酒を飲めているし……って。みんなそうなんですよね、毎回暴れるわけじゃないし、毎回トラブっているわけじゃない。まともな日も、軽く飲める日もあるんですよ。

 だから自分ではそんなつもりが無くても、酒を飲むと態度が変わったり、暴れたことがあったり、周りに注意されたことがあるなら自分は依存症の危険性があるって自覚しないとダメだと思うんです。

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待ち受けているのは「世間という名の刑務所」