阪神の9点差大逆転勝利から2カ月半余り。「世の中、上には上がある」ことを思い知らされたのが、7月26日の中日vsヤクルト(神宮)だった。

 6回を終わって中日が10対0とリード。高校野球の地方予選なら5回の時点でコールドゲーム成立である。ところが、ここから奇跡の大逆転劇が始まる。

 6回まで中日の先発・大野雄大に3安打に抑えられていたヤクルトは7回2死、代打・中村悠平の左越え2ランで反撃開始。2試合連続スタメン落ちした正捕手が意地を見せた。

 この一発で目を覚ましたヤクルト打線は8回、バレンティンの左越え2ランなど6長短打で6点を返し、なおも2死満塁で、「チームの勢いに乗せてもらった」という山田哲人が左前に快打。一気に10対10の同点に追いついた。

 そして、延長10回1死、代打・大松尚逸が伊藤準規の初球、147キロ直球をフルスイングすると、高々と上がった打球は、ヤクルトファンが総立ちで迎える右中間席へ劇的なサヨナラ弾となって吸い込まれていった。

 10点差からの逆転劇は、セリーグでは1951年5月19日の松竹13対12大洋以来、66年ぶり3度目の珍事である。

 右アキレス腱断裂でロッテ戦力外になり、2月のキャンプ中に入団テストを経てヤクルトに拾われた大松は、5月9日の広島戦(神宮)に続いてシーズン2本目の代打サヨナラ弾。

「去年のことを考えれば、野球をやれていることが幸せ。ライトスタンドのファンの皆さんの声援で伸びてくれと思ってました。いつかこういう日が来ると信じていた」と感無量の面持ちだった。

 今度はタイトル争いをめぐるどんでん返しの話である。

 最高勝率のタイトルを狙う千賀滉大(ソフトバンク)が10月6日のオリックス戦(ヤフオクドーム)で先発した。この日まで13勝4敗の勝率7割6分5厘。基準の「13勝以上」をすでにクリアしているので、登板を回避してタイトルを確定させる手もあった。

 だが、あと6イニングで規定投球回数に到達することと、前回登板した9月25日の楽天戦(同)が7失点という不本意な内容だったので、「不調のままCSを迎えたくない」と、異例の消化試合での登板となった。

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異例の消化試合登板の結果はいかに…