ヤクルト・大松尚逸 (c)朝日新聞社
ヤクルト・大松尚逸 (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「大逆転&どんでん返し編」である。

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 5月6日の広島戦(甲子園)、「今日はボロ負けや!」とあきらめて、観戦途中で帰った阪神ファンは、さぞかし後悔したことだろう。

 5回表まで0対9と一方的にリードされ、その裏、梅野隆太郎の中前タイムリーで1点を返したものの、なおも1死一塁のチャンスで、原口文仁が遊ゴロ併殺打。広島の先発・岡田明丈の前に5回までわずか2安打では、どんなに熱心な虎ファンでも、「逆転は無理」と考えてもおかしくないところだ。

 ところが6回、試合の流れは一気に阪神に傾く。2死満塁から鳥谷敬の一塁内野安打で1点を返した後、3連続押し出し四球で5対9。そして、この回2度目の打席となった高山俊が右翼線に走者一掃の三塁打を放ち、あっという間に1点差。

 さらに7回1死一、二塁、鳥谷の二ゴロを西川龍馬が大きくはじく間に二塁走者・江越大賀が本塁へ。果敢なヘッドスライディングでクロスプレーとなり、判定は「セーフ!」も、17分間のリプレー検証の末、一転「アウト!」に……。同点劇は幻と消えたかに見えた。

 しかし、これが虎戦士の闘志をさらに奮い立たせる。なおも2死一、二塁で、糸原健斗が広島の3番手・薮田和樹から右前に同点タイムリー。さらに梅野の右越え三塁打で11対9と大逆転に成功した。

 終わってみれば、球団史上初の9点差をひっくり返しての12対9の勝利。金本知憲監督も「僕も長い間プロ野球にいるけど、初めてですね。最初はお客さんに申し訳ない気持ちで一杯で、ちょっとでも盛り上がるシーンを作ってほしいと思っていたけど、まさか逆転するとは」と驚くばかりだった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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ヤクルトが奇跡の大逆転