中日・祖父江大輔(左)と阪神・岡崎太一 (c)朝日新聞社
中日・祖父江大輔(左)と阪神・岡崎太一 (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「人間我慢すれば報われる編」である。

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 開幕以来、なかなか調子が上がらなかった中日が、4月20日の阪神戦(ナゴヤドーム)で5対2と快勝。2017年シーズン初の連勝を記録するとともに、5位・ヤクルトを蹴落として、最下位脱出をはたした。

 勝利投手になったのは、0対1の7回に先発・大野雄大をリリーフした4年目右腕・祖父江大輔。この回を三者凡退に切って取ると、その裏、平田良介の左越えソロなど味方が3点を挙げて逆転。勝ち星をプレゼントしてくれた。

 そして、これがデビューから9連敗中の祖父江にとって、通算142試合目で手にしたプロ白星だった。

 ちなみに、デビューからの連敗は、1950年の成田啓二(国鉄)と2006~2007年の松崎伸吾(楽天)の「11」がプロ野球ワースト記録。

 これに対して、祖父江はデビュー以来、全試合をリリーフで登板し、2016年まで通算1セーブ、25ホールドを挙げているので、先発投手と同じ俎上で論じるのは野暮というものだが、やはり「全然気にならない」と言えば、嘘になるはず。

「中継ぎは勝ちにこだわらないけど、1勝はすごくうれしい」の言葉どおり、初めて上がったお立ち台とともに、一生忘れられない特別な日になった。

 森繁和監督も「勝っていないと聞いて、『エッ!』と思った。踏ん張ったから勝ちが転がり込んできた」と、脇役としてチームを支えつづけた右腕の1勝を、自分のことのように喜んでいた。

 2016年シーズンで7年ぶり通算2打点目のタイムリーを記録した阪神の捕手・岡崎太一が、今度は2017年6月3日の日本ハム戦(甲子園)でプロ13年目の初本塁打を放った。

 1点を追う4回1死三塁、メンドーサの初球を空振りしたとき、金本知憲監督はスクイズのサインを出そうと思ったという。

 しかし、岡崎は前日の日本ハム戦でも2対0とリードした6回1死二、三塁でスクイズを失敗。この逸機が祟り、チームは逆転負けを喫していた。

 その記憶も生々しく、「また失敗したら…」とためらっているうちに、岡崎は2球目も空振りし、サインを出すタイミングを逸してしまった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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金本監督の“エール”で岡崎はさらに奮起!?