飼い主さんに抱っこされるココちゃん。一緒に椅子に座っている文福くんはホームの犬だ(撮影/工藤朋子)
飼い主さんに抱っこされるココちゃん。一緒に椅子に座っている文福くんはホームの犬だ(撮影/工藤朋子)
ずっと犬や猫と暮らしてきたというチャコさん。抱き方も慣れたもの。「ここの猫たちはとっても穏やかで優しいの。猫らしく気まぐれで、癒やされるわよね」とほほ笑む(撮影/工藤朋子)
ずっと犬や猫と暮らしてきたというチャコさん。抱き方も慣れたもの。「ここの猫たちはとっても穏やかで優しいの。猫らしく気まぐれで、癒やされるわよね」とほほ笑む(撮影/工藤朋子)
自由にリビングを闊歩する犬たち。ホームの犬のほとんどが愛護団体から譲り受けた保護犬だ(撮影/工藤朋子)
自由にリビングを闊歩する犬たち。ホームの犬のほとんどが愛護団体から譲り受けた保護犬だ(撮影/工藤朋子)

 犬やを子どものように考えている人にとって、一緒に入れる高齢者ホームは、まさに理想の場所──。発売中の週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018」では、そんなペット入居可の高齢者ホームでのニャンともワンだふるな暮らしぶりに密着した。

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 一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、国内における犬と猫の飼育世帯数は1344万4千世帯(2015年末時点)。およそ4世帯に1世帯が犬もしくは猫を飼育している計算だ。その中には高齢者も少なからず含まれているが、高齢者ホームの大半は犬や猫を連れての入居を認めていない。ホームに入る際はペットを手放さなければならないことが多いのが現状だ。

「愛するペットを連れて入居したい」

 そんな切なる願いをかなえるホームが神奈川県横須賀市にある。社会福祉法人心の会が運営する特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」だ。

 施設は4階建て。居室10室と共有スペースであるリビングで構成されるユニット制を採用している。動物と暮らせる2階フロアには、犬ユニットと猫ユニットが二つずつ。計40人が入居している。

■長年連れ添った愛犬と離れたあとに…

 理事長兼施設長の若山三千彦さんは、自身も3頭の犬と暮らす愛犬家である。ペットと暮らせる施設をつくると決めたのは、それ以前に取り組んでいた在宅介護で、ある高齢者のケースを見たからだという。ホームに入る際、長年連れ添った愛犬を苦渋の決断で保健所に送ったその人は、入居後半年もせずに、失意のうちに世を去った。

「人生の最期を絶望の中で迎える人を減らしたいと強く思った」

という若山さんは、心残りを減らすべく、さらに入居者が亡くなった後も遺された犬や猫たちが施設のペットとして暮らせるよう態勢を整えた。入居者死亡時は親族が引き取るのが一般的な他のペット可ホームとは一線を画す仕組みだ。それが実現できたのは、施設のペットがいることが大きいという。

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