特養では週2回の入浴が一般的ですがうちは週3回、対応できる場合はそれ以上のときもあります。起床時間や消灯時間も決まっておらず、食事も指定の時間内であれば好きなときに食べられます。あきらめていた生活を介護によって取り戻していただく。犬やとの暮らしもそのひとつにすぎないのです。

 それに、そもそも高齢者ホームの仕様は動物との共存に適しているんですよ。消臭対策も万全で床材も滑りにくく段差もない。ペット用に特別な対策をしなくても大丈夫なのでそんなに障壁はないのです。実際、用意したのは飛び出し防止のゲートくらいですから。もちろん、犬猫と安全に暮らすための対策はしっかりと行っていますが。

 犬のしつけや彼らが精神的に落ち着けるような環境づくりをトレーナーに指導していただいたり、獣医師による健康チェック、トリミングなどの衛生管理を万全に行っています」(若山さん)

■ペットの存在は、介護スタッフにも好影響

 入居の条件で外せないのは、根っからの犬・猫好きであること。

「こんな状態なので(笑)、24時間犬や猫と一緒で平気。むしろこの環境でこそ暮らしたいと言ってくださる方でないと難しいのです。犬や猫は好きだけどそこまでは無理という方も多いので、待機待ちはそれほど多くないんですよ」

 介護スタッフも同様に犬や猫が好きで、どうしてもこのユニットで働きたいと強く希望した人だけが勤務する。ペットの世話はスタッフが担当するため、日々の雑務は増えるが、不満はほとんどあがらず、むしろやる気につながっているという。このユニットで働きたいと空き待ちする人もいる。こうしたスタッフのモチベーションの高さがよい雰囲気をつくり出しているのは言うまでもない。

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